花まつり

     ○稚児の弟母と写りし花まつり
(ちごのおとうとははとうつりしはなまつり)
仏生会
       ○涅槃図も地獄絵も出し仏生会   秋甫
       ○華傘や僧も着飾る灌仏会     々
       ○花まつり伏見の稚児は狐鼻    々
 4月8日はお釈迦さまの誕生日。お釈迦さまは、お生まれになってすぐ歩かれ、片方の手をあげ、人差し指で天を指して「天上天下唯我独尊」と言われたそうである。その時甘い雨が天から降り注いできたから誕生日には甘茶を仏像にかけてお祝いする風習ができたそうだ。
 花まつりの幼い記憶をたどってみると、柔らかい温かなものに包まれる想いである。妙心寺花まつりは盛大だった。長い境内の道には露店が並んだ。なかでも飴細工の男は人気で周りを子供たちが取り囲んでいた。柔らかい飴の塊から象や狐や兎が小さな糸切り鋏によって切り出されるのである。注文した子供の手に渡るときには、それはガラスのように硬くぴたりと動きを止めていた。一方大勢の僧たちは一つのお堂に集まって紫、茱、黄色と艶やかな袈裟をつけて読経の大唱和である。聞いているとその声は大海原に押し寄せる怒涛のようにお腹の中に響いてくる、悲しいのやら怖いのやら辛いのやら泣き出したいような妙な気持ちに支配されたのを覚えている。
  何故私の手元にあるのか経路は忘れてしまったが、着物を着た母と稚児装束の弟の写真がうちに仕舞ってある。弟の年齢から城南宮の花まつりの行列だとすぐにわかった。母は美しく弟も可愛かったがその弟も今年65歳になってしまった。