啓蟄

     ○啓蟄や畳に蟻の先鋒隊
(けいちつやたたみにありのせんぽうたい)
虫出でぬ
 大地が温まり土の中でちじこまっていた虫たちが地上へ出てくる頃。早や我が家の居間にも啓蟄の儀式とばかり蟻がぞろぞろ出てくる始末。
 この蟻には去年の暮にまで及ぶ出没に肌を粟立たせられたのである。砂糖などの保管に油断すると黒ゴマ状態になっていて蟻と知恵比べのように苦労したものである。
 じっくり観察してみると壁の隙間を出入りしている風でもある。長年の間に塗りものが乾燥したのか枠木と壁土の間に出入りできるほどの隙間があった。ムカデの年、ゲジゲジの年、油虫の年、蛞蝓の年、虫にも大繁殖の年がそれぞれあるようだが、人間にはもう大繁殖の年といったものはないのだろうか。