河童忌

     ○河童忌や糸瓜のような胡瓜もらう
(かっぱきやヘチマのようなキュウリもらう)
龍之介の忌日
 十代の終わりに龍之介や太宰の作品に出会ったとき、彼らはすでに自死した後でしたが、作品に惹かれれば惹かれるほど、彼らの現実の幕引きは作品の延長上に存在していたと思えるのでした。
 龍之介は「僕の将来に対する唯ぼんやりした不安」そのことを起因に「水洟や鼻の先だけ暮れ残る」と辞世の句を書いて人生を終結してしまったのです。「玉と砕けても全き瓦として生き残ることを恥じる」といったアイロニーが十代の当時の私を酔わしめたのでしょう。
  然し、彼らの二倍もの時間をこの世で呼吸してしまった今となれば瓦はまた瓦としての生き分があってもいいのではないかと開き直っています。