夏の鴨

     手賀沼の一羽となりて夏の鴨
(てがぬまのいちわとなりてなつのかも)
千葉の手賀沼
      ○汝を問へばいまも一羽の通し鴨    秋甫
      ○偲ぶればいま手賀沼の通し鴨     秋甫
 私たち家族にとって千葉の手賀沼は忘れがたい所であります。あれは葉桜の深い緑が風にそよいで爽やかな一日でした。その春歩き始めたばかりの孫に、ベンチに座って何か語りかけているのでしょう。そんな一枚の写真が脳裏に残っています。彼にとって最後の初夏となりました。
 5月21日は命日。あれから14年が経ちました。

 鴨は秋の終わりに渡って来て、春になると北へ帰って行きます。中には体調を崩したり何かの理由で、北へは戻らずその儘居残る鴨もいます。そんな鴨のことを「通し鴨」「夏の鴨」と詠んで夏の季語になります。