天高し

     ◦カーナビに老女と老女天高し
(カーナビにろうじょとろうじょてんたかし)
 隠れ家
 仕事をリタイアしてから15年余り経ってしまった。心も体もすっかり仕事から解放さているが、あまりみごと過ぎてもそこで費やした何十年もの時間が少し愛おしく思われてくる。
 Uさんは、かっての仕事仲間であった、まだ車の免許書を持たなかった彼女を職場へ行く途中で拾って終わればまた、家まで送り届けた。その期間がどれほどだったかは忘れていたが、彼女は7年だと言って、必要以上に恩義を感じて今でも交友が続いているのである。唯一仕事上の人間関係となってしまった。
 さて、今回彼女の親戚が経営している、彼女いわく「隠れ家」的レストランへ行くことになった。離れた街の郊外なのだ。彼女は何度も行っていたので、走れば助手席で案内してくれるはずであった。
 ところが...........。
 カーナビで検索しようとしても、電話番号は該当なし。住所や店の名前で検索しようとすると、今度はカーナビの扱い方が不十分で見つけ出せない。
 広い田圃の道や農園のハウスの間をぐるぐる回って、殆ど倍の時間を要してやっと隠れ家に到着。
 仕事を持たないということは、実に贅沢な時間を持っているものだ。