二科展

     ◦二科展を油絵具の香より出づ
(にかてんをあぶらえのぐのかよりいづ)

 愛知県立美術館のデュフィ展に入る。軽妙な線と明るい南仏を思わせる色彩は魅力的であった。年代順に観ていくと、そんな彼にも重くて暗い出発点の作品があったことに驚く。デュフェ本来の色調はトンネルをぬけ出て、突然視野が広がってくるように見えた。
 その会場を、隣の部屋からカツカツと靴音を響かせて移動して来る一人の紳士がいた。白いパンツに真っ赤なシャツを着てカンカン帽子という出で立ちだ、小脇には数冊の本を抱えている。デュフィの絵の会場を十分に意識したパホォーマンスであったか。