夕刻、勝手口から「いる?」と恵子さんの声がして戸を開けてみると、キャベツを3個抱えて立っていた。
トラックの荷台にはキャベツを山積みにして博さんがエンジンをかけたまま運転席で待っていた。畑からの戻りに届けてくれたのである。
きのうは菠薐草を出荷したのだろう、やっぱり夕刻に取りにくるよう電話をもらって家へ行ってみると、彼女は孫を見ながら大鍋に煮物を作っていた。
◦大鍋の湯気に包まれ冬近し
廚の土間には戸棚から、鍋やボールといった金物類がいっぱい引っぱり出されて、孫はそれらの音を聞き比べているところだった。
◦鍋だして遊ぶ子に廚冬めく
「日々是好日」へ付するに相応しい流れではあったが、日々の好日をみつけるにはそれなりのパワーが必要なのだという事をうっかりしていた。
実はこの数日、衰えるという変化に囚われて苦しんでいたのだった。ぼんやりした記憶の糸をたぐり寄せてみると、と、言うのも奇妙なことに古い記憶は鮮明に思い出せても、反対に新しい記憶が曖昧なのである。
つい4、5日前に体験した事をメモしているので、メモのまま羅列してみることにする。
2010/11、10 ダライ.ラマ法王14世 講演
宗教における哲学
①神の存在を受け入れる宗教(キリスト教、その他)
②無神教 (チベットの仏教)
②の教え いきもの全ての存在は原因と結果から生じるもの
原因から生じるものは常に変化するものと教える
全ての人に仏教が最善とは考えない、各人の資質によって仏又は神を信仰すれば良い。
自我は存在せず、無我の見解(五蘊の存在に依存している)
縁起の見解→すべてのものは仏縁によって生じてきた
見解と体験→非暴力
因と条件が整うところに物質が生じる
宇宙のはじまり(ビッグバーン) 大きなエネルギーの原因で宇宙という結果が生じている。
幸せと苦しみは五感として受け取っている
一種のカルマ(業)から生じる行為を(因)としてなすものは心の動機を生じる。執着は他者に害を与える。
因果の法則
①肉体的痛み 動物
苦 ②変化に基く ②〜③は人間
③偏在的なもの
苦の因を取り去ることは可能か
煩悩から解放される ◦執着と怒りから解放される
◦無知の心ゆえ苦しみをつくっている
◦利他へ働くことは幸せに繋がる
無知 ①縁起の有り様を知らない
②究極的なものの有り様、真如を知らない
現象はあらゆる姿に現れるが無知は真如の現れを知らない
真理 ①世俗の真理
②究極の真理(ものの現れに執われない)
無知のレベルを滅する慈悲心を育む
①教えによる知恵
②自分で考える
③確信を得れば瞑想によって無我の境地に入る
④実践する
仏母(般若心経の教典)大乗仏教の教え 清らかな弟子たちへの教え
悟りに至る迄の段階(マントラ)
完成された知恵 仏陀の知恵に至る
結果としての
般若波羅密
修行としての
三蔵 ①知恵
②律蔵
③論蔵(上下のクラスがある)
三つの法輪 すべてのものを分析した教え
メモは以上
他に「般若心経を説く」の小冊子と退場時に頂いた赤い糸が手元にある。
この赤い糸については今後私の心の変化に応じて単に物質的な赤い糸になったり、縁という起になる因かもしれないし、まずは執われないでいる事にしよう。
ともあれ抱えていた課題の一つから解放された心境である。それは透徹した無邪気を感じるダライ.ラマ法王14世に接した唯一の報酬だったかもしれない。