鎌鼬

     ○鎌鼬少年の頬を掠める
かまいたちしょうねんのほほをかすめる)
冷たい一日
 時々霙が音をたてて斜めに降っていたが、午後は豊受山に十一月の初冠雪となって窓の外に広がった.本格的な冬になる気配に暖房具など備えることにした。
Y君へ
 今日は豊受山に雪がふったよ。大急ぎでストーブを出して、灯油を入れて冬に備えた次第。そちらもやっぱり寒いのだろうね。
 カズオ石黒の「わたしを離さないで」私も読んだよ。以前に観た映画「Å.I」を思い出した。人間のクローンなんて切ないね。あの頃牛や羊では実験が繰り返され成功していたようだけど、なら、人間だって同じだからね。人類の抱えている食料不足の事情を遺伝子組み換えの作物で乗り切ろうと考えたんだ。当時は敏感に反応していたけどこの頃はあまり警鐘を聞かなくなった。それで、遺伝子組み換えの食料品を調べてみると、害虫に強いもの、除草剤に強い物と、現実にいろいろ操作された食品が目白おしに表示された。たちまち石黒カズオ作品の中の「提供者」の心境になってしまった。
 さて、石黒という同じ姓の工学博士のロボット(アンドロイド)はどう思う?
自分と同じ形と思考を持つロボットがいて、そいつはどんどん学習して進化をするし、衰えていく肉体もない、そんなのと本人が対峙したらどんな気持ちになるだろうか。制作者の博士は自身のアンドロイドに離されないように、顔の整形手術を何度も試みているという。
 私だったら、DNA操作された食品でも何でも食べて、さっさとこの世からおさらばできるけど、Y君、君には未来がある。