宵山

     宵山の鉾引きし日も雨の京
(よいやまのほこひきしひもあめのきょう)
祇園祭宵山
 私にとって京都が町という形で意識され始めたのは小学校入学ため滋賀県の祖父母の家から当時両親が住んでいた太秦に連れ戻された頃からである。それまでの気の遠くなるような退屈な田舎の生活から一変して衣、食、住、すべてがカルチャーショックの真ただ中に放り込まれたのである。
 京都とは言えまだ敗戦の痛手から立ち直っていなかった町に、少なくとも私の周辺ではまだまだ食べることに精一杯で、記憶にあるのは極小規模な地域に根ざした横町の祭りくらいであるが、やがて早い自立をして京都から離れてみて、はじめて京都規模の祇園祭がクローズアップされたのである。
 しかし、ふりかえってみると、8歳前後の時、一度山鉾の綱を引いたことがあった。その頃住んでいた場所から照らし合わせると油小路の山鉾だったのだろうか。私には横町の地蔵盆の祭りの方がずっと楽しく印象に残っているのではあるが、、、。あの日、夕刻から引いた山鉾の綱の手にやっぱり雨が降りかかっていたのを覚えている。