野分

     ◦表札の字の丸みゆく野分かな
(ひょうさつのじのまるみゆくのわきかな)
石垣りんの詩
 若い頃に彼女の詩「シジミ」を朗読に聞いて、そのインパクトに圧倒されました。その後忘れていましたが、きのう図書館の本棚にみつけました。
    「シジミ」  石垣りん
  夜中に目をさました。
  ゆうべ買ったシジミたちが
  台所のすみで
  口をあけて生きていた。


  「夜が開けたら
  ドレモコレモ
  ミンナクッテヤル」


  鬼ババの笑いを
  私は笑った。
  それから先は
  うっすら口をあけて
  寝るよりほかに私の夜はなかった。