○秋の蝉芭蕉慕って立石寺
(あきのせみばしょうしたってりっしゃくじ)
立石寺の蝉塚
○落蝉や僧の辞世に「死にとうない」 秋甫
○残る蝉少数派とて声低く 々
○死ぬ時は墨染のまま法師蝉 々
高僧の臨終に弟子たちが取り囲んで僧正一言お言葉をと要請して、一同かたずをのんで待っていると、僧は「死にとうない」と言ったそうである。
その高僧が誰だったか、忘れてしまったから書かれていたと思われる本を出した。紀野一義だったと記憶していたので氏の数冊ある本の中から「死にざま生きざま」を開いた。中は染みてすっかり黄色く変色してしまっていた。果たして「死にとうない」と言って死んで逝った高僧の誰かは確かめられなかったが、パラパラ頁をめくっているとこんな詩に出くわした。
おゆるし
残りのいのちが
すくないので
よみたい本だけよみます
耳がわるいので
きこえる話だけききます
おゆるしください