豆ご飯

     ○豆飯の豆にひょっこり亡母の顔
(まめめしのまめにひょっこりははのかお)
亡母を想う
 子供の頃はこの豆ご飯が好きではなかった。豆が口の中で邪魔をして違和感のある食べ物でしかなかったのだ。
 ところが、歯は乱杭で所々抜け落ちた場所へ豆が挟まって痛みすら感じるのに、豆ご飯が今頃になって好きなのである。うっすらと塩味がきいたご飯と豆の香りは歯茎の痛みなどかき消してしまうのが不思議である。
笊を膝の上に乗せてエンドウ豆を剥いている母の顔を思い出した。いつだったか従妹が私の顔を見て、「叔母ちゃんかと思った!」と真剣に驚いたことがあった。それほど私は母似だったとは...。