五月寒

     ○五月寒ロシアに迷ふ夢さみし
(ごがつさむロシアにまようゆめさみし)

 旅行から戻ってよく夢を見る。
 「ロシアの内戦に巻き込まれてしまって、どこかの部屋に潜伏しているのである。拉致されているというのでもなく、かと言って出ると危険になるというスィチュエイションに置かれている風だった。中には日本人を含めて数人のロシア人もいる。言葉が分からず喚き出す者も居て時間的には閉じ込められて数日は経っていた。誰か暗い戸を開けると外は薄ぼんやりと夜が明けるところで僅かな空間から新鮮な朝の空気が入ってくるのを感じた。誰かが梅が成っていると言った。やがて私のところにも大きな柔らかい梅が回ってきた。さほど空腹は覚えていなかったが一つもらって齧ったような気がする」....夢の話

 私はここのマルクス.レーニン主義に青春を捧げたと勝手に思っている。一人で空回りしてしまった青春をその後修復するのにかなりの時間がかかった。いや今でもその時の記憶が後遺症のように甦るのも事実である。
 せめてこの国があの時のように赤旗で飾られていたら、私のあの一時期を切り取って、誇りにすることもできたのに、いまやマルクスレーニンは労働者の広場から葬り去られようとしているのだ。新しい潮流の元に全てを打ち壊して打ち立てた輝かしい未来を、100年も経たないうちに捨ててしまおうとしている。