○大方の世の中は見し啄木忌
(おおかたのよのなかはみしたくぼくき)
啄木忌
○啄木忌どこか哀しき女(ひと)のゐて 秋甫
○天井に雨漏りの痕啄木忌 々
○吹き荒れて路地が哭きだす啄木忌 々
きのう季刊句誌が届いた。創刊は昭和33年であるらしいが、参加して10年近くなる。その間にも5人の同人の追悼文を書いているから高齢者が多いのだろうと思っている。実は投句で参加しているがメンバーの誰とも会ったことがないのである。いや一人だけはこの句誌を紹介してくれた古い友人が一緒に頑張っている。266号の彼女の句を選んで紹介したい。
○風花に漂い私が消えていく 早苗
○傷ついた林檎と私年を越す 々
○抜歯すみ西陽と電車心地よし 々
○孫のごとキャベツを抱き寒の中 々
「啄木忌どこか哀しき女のゐて」は彼女のこれらの句を読んで作ったのであるが、彼女には百歳近くなった母が九州にご存命である。