○朝な夕な霞易しき独りかな
あさなゆうなかすみやすしきひとりかな)
霞の世の中
       ○一村を霞の底に暮しをり    秋甫
       ○鐘の音や霞棚引く高さより   々
       ○夕霞幽霊船を沖に泊め     々
 目が霞んでいるのか、世の中が霞んでいるのか、何もかもぼんやりと頼りない。大方はそれでも不満はない、何もかもはっきり見えるとその透明度で自分も晒されていることを自覚せざるを得ないから、むしろ虚ろな眺めの方が心落ち着くというものである。