鴨の陣

     ○鴨の陣朝の職安思い出す   
(かものじんあさのしょくあんおもいだす) 
日雇い労働者
 随分昔のことになる、昭和30年代の職安の朝の風景を思い出す。その日の労働現場を求めてやってくる日雇い労働者が職安の前の広場に朝早くから集まっているのだ。広場の周辺にはバラック建ての簡易露店が並んでうどん屋、天ぷら屋、パン屋、古着屋などが賑やかに商売を始める。やがて、職安の建物の二階の窓から各現場へ行く人夫の番号を木札に書いてぶら下げるのである。仕事を探しに来た日雇い労働者たちは各人自分の番号を書いた手帳を持っていて、その番号が木札に出た現場へ向かって行く訳だ。当然番号が出なくて仕事にあぶれる者もいる、仕事にありつけなかった労働者はしばし周りの出店に入って小食をとったり、仕事にあぶれた今日一日の気の脱けた時間の名残りを一種楽しもうとしているのである。その賑わいは昼近くまでつづくのであった。
 朝の散歩の途中、国領川の河口の橋の上から、この頃はこんな昔を連想させる鳥たちの風景をよく見る。