○犬が来て鼻つけていく放哉忌
(いぬがきてはなつけていくほうさいき)
四月七日(放哉忌)
。咳をしても一人
。いつしかついて来た犬と浜辺に居る
。とんぼが淋しい机にとまりに来てくれる
。ビクともしない大松一本と残暑にはいる
。障子あけて置く海も暮れ切る
。足のうら洗へば白くなる
。自分をなくしてしまって探して居る
。入れものがない両手で受ける
。雀が背のびして覗く俺だよ
。白々あけて来る生きていた
。これでもう外に動かないでも死ねる
辞世の句
。春の山うしろから烟が出だした