◦蝉しぐれ生命の腑が鳴いている
(せみしぐれいのちのはらがないている)
夏が好き
机に座っていると蝉しぐれが腑に響いてくる。それは命の躍動のように思えた。私はふと、この夏が好きだったことを思い出す。いつの間にか私の内の魂が弱ってしまって躍動に呼応できなくなっていたが、私は夏が好きだったのである。猛暑日はもう連続で10日もつづいた。額から、首から、腕から流れる汗は実に気持ちがいい。生まれ変わったら、造船するような大きな鋼鉄を打ってみたいと以前から思っていた。油に汚れた作業服や手、充実した疲れは、一日の労働をしっかり証してくれるものだ。