蟻地獄

     ◦初まりはお天気のことなど蟻地獄
(はじまりはおてんきのことなどありじごく
連日猛暑
 朝は4時過ぎから蝉が鳴き出す。この間までは囀りが賑やかに目覚めを促したものだった。四季折々何かしらが生活の変化を知らせてくれるのは自然が豊かにある証拠なのだが、6時前から30度近い気温の中では蝉の声も頭の中を撹拌棒でかき回されているような感覚である。

 畢竟、人との会話も怪しくなる。内に抱えている不快感がヒートアップしてどんどん口論調に発展していくのだろうか。
 先日、庭の木を整理する序でに西のフェンスから侵入している木があったのでフェンス越しに鋏を入れたのである。フェンスの西側は荒れ地で、切った木も自然に生えてきた雑木と疑う余地のないものであったが、土地の持ち主は「うちの木を勝手に切らないでくれ」である。理屈としては真っ当かもしれない。しかし、こちらの思い描いていた会話は「手入れもせんと、放っといて悪かったな」「いいえ、こちらこそ勝手に切らせてもらって済みません」という風な具合であった。