棒鱈

     ○棒鱈の乾き切ったる骸かな
(ぼうだらのかわききったるむくろかな)
天日干しの鱈 
       ○棒鱈を擲つ金城さんの赫ら顔    秋甫
       ○ぼうだらの棒の如くに立ってをり  々              
       ○棒鱈の反骨残る棚の隅       々
 子供の頃棒鱈はよく食べた。特に正月のおせちにはこってりとした飴煮が重箱に詰められていたものだ。棒鱈で繰り返し思い出す光景は「棒鱈を打つ金城さんの赫ら顔」と詠んだように、京都の安井に居た家では一時二階に男性が間借りしていたのだろうか、血管が浮き出て真っ赤な顔の男が、裏の三和土で棒鱈を叩いていた姿である。彼が金城さんだったかどうか、後に聞いた話では彼は北朝鮮へ引き揚げて行ったということである。
 何故か、山東三鬼の「露人ワシコフ叫びて石榴打ち落す」という句が頭に浮かんでいた。