良夜

     ○家畳む話もぽつり良夜かな
(いえたたむはなしもぽつりりょうやかな)
後期高齢者
 京都にいる友人から久しぶりの電話。彼女は私と異なって四季の折々には電話かメールで私の無事を尋ねてくれる半世紀を越えた交友である。
 彼女、今年ついに後期高齢者の仲間入りをしたという。後期高齢者という呼称で段階を区切られてから久しいが、当初はブーイングもあったようである。彼女いざ自分がその域に達してみると「後期高齢者ってよく考えられてるわ」というのである。途端に身体のあちこちがガクンとワンランクダウンしたと、そしてそのワンランクにはエクササイズで改善できない強固な拒否が感じられるらしい。この前にうちへ来たとき、太っている私にもっと痩せなければと言って絵に書いたエクササイズ表を勝手に壁へ貼って帰ったのである。その後は電話の度にエクササイズはつづけているかうるさく訊いたものだが、そういえば今回はエクササイズの話は出なかった。
 最近夫婦で家を畳む相談をしているらしい。数十年前、三人の息子たちのうち誰が戻って来ても住めるように家を増築して待っていたのであるが、それぞれに巣立った場所を離れられなくなって、家族が帰省して来た時使うくらいで日常の管理がたいへんなのだと言う。
 2,3年かけて身の回りを整理しながら、自分たちに合った施設を探していくという。朝日系テレビでやっている「やすらぎの郷」が広くブームになっているのだなと思った。