藪入

     ○藪入の叔母の包に赤けだし
(やぶいりのおばのつつみにあかけだし)
叔母の藪入り
 松の内が済むと、叔母が藪入りで戻ってくる。日の明るいうちは目いっぱい婚家の仕事をして実家へ帰る頃はとっぷりと暗い。叔母は提灯を片手に風呂敷包みを抱えてくる。暗い林の奥から提灯の明りが来るのを私は待っていた。
 叔母の藪入りは私にとっても待ちわびるものであった。包みの中から赤いおこしや前掛け、襷にいたるまで赤い色が現れる華やかさが嬉しかったのだ。その頃の私の日常はそれほど暗く、殺風景な空気の中にあったのである。