硯洗う

     ◦硯洗ひて待つ今宵星なくて
(すずりあらいてまつこよいほしなくて)

 七夕の笹かざりに願い事を書いたのは、人生のほんのいっときの間に過ぎ去ったように思います。
 願い事はおろか、書くことも、人と話すこともめっきり少なくなりました。随分古くからの友人などとたまたま話す切っ掛けがあっても、なかなか会話が弾まず別れてからあれこれ話題が頭に浮かんでくるといった始末です。
 厚い雲の遥かな天空では今晩、銀河に二つの星が出会うことでしょう。