しかた

     ◦弔ひて鳴き砂踏めばしかた吹く
とむらいてなきすなふめばしかたふく)

 娘婿のお父さんが亡くなられて、島根県の江津へ葬送に参列して来ました。ここのお通夜に座って初めて浄土真宗のお経に触れましたが、「なも〜だ、なも〜だぶ、南無阿弥陀仏」とご導主の唱名される哀切な響きを聞いていると、人の子が御仏に取りすがって哀願しているお経なのだと思いました。日頃耳にしている真言宗のお経とは手を合わせる場所が少し違っているのかもしれません。神さまや仏さまの前では無抵抗の赤ん坊のようであるべきなのかもしれません。
 
 夏の季語「ひかた」は日のある方から吹く風の意味で、山陰地方を中心に広く北九州から青森にまでわたって呼ばれている季節風ですが、島根では南風、岩見地方は南東風になるそうです。

 帰途は国道9号線を出雲方面へ走りました。途中には鳴き砂の琴ヶ浜風力発電機が並ぶ浜辺があったりしました。古の親鸞上人はこの日本海沿岸を越後から南下してこの地も伝導して廻られたのでしょうか、そんなことが彷彿される眺めでした。