菜種梅雨

           〇終日を近見の山や菜種梅雨

             (しゅうじつをちかみのやまやなたねつゆ)

          

            〇菜種梅雨一幅の山水画の窓   河童三子

            〇菜種梅雨マルチ畠の光りかな  々

            〇何日も海を隠して菜種梅雨   々

 

虚子忌

          〇虚子の忌や椿の杖に花の咲く

             (きょしのきやつばきのつえにはなのさく)

           

           〇今日虚子忌宙の汀子とホトトギス   河童三子

           〇椿寿忌や僧来て椿掃き集める     々

           〇虚子の忌や太子を偲ぶ椿堂      々    

 

 

                                  

花冷え

            〇花冷えや草色の有刺鉄線

              (はなびえやくさいろのゆうしてっせん)

          

            〇花冷えや稍々燃えきれぬ体脂肪    河童三子

            〇花冷えやコンビニの茶とおにぎりと  々

            〇花冷えの野の蝶を追い立てる     々

 

春の星

            〇妻となったあの夜に見し春の星   

             (つまとなったあのよるにみしはるのほし)

          

            〇春の夜の大曲線に二つ星     河童三子

            〇牛飼いの乙女誘ふや春の星    々

            〇春の星獅子や烏の落るかと    々

 

花曇り

           〇六地蔵から醍醐寺へ花曇り

             (ろくじぞうからだいごじへはなぐもり)

          

           〇里山の頂にある養花天(ようかてん)   河童三子   

           〇花曇りレジシート見直してゐる      々

           〇養花天離れて歩く二人かな        々

 

清明

             〇清明や夢に父ゐて母をらず

              (せいめいやゆめにちちでてははおらず)

           

             〇清明の休耕つづく大地かな   河童三子             

             〇清明や海に真白な雲のせて   々

             〇清明の牧に草食む仔牛かな   々

 

春宵

             〇春宵や海辺の町の空に浮く

             (しゅんしょうやうみべのまちのそらにうく)

                    

             〇朝からの雨ふりつづく春の宵    河童三子

             〇春宵や灯を点けぬまま頁繰る    々

             〇春宵や近き稜線のみ残る      々