勿忘草

            〇な忘れそ勿忘草にささやかる

             (なわすれそわすれなぐさにささやかる)

            

             〇勿忘草遠い昔の映画かな    河童三子

             〇ふり返り吾に教へむ勿忘草   々 

             〇勿忘草うす水色の寂しさよ   々

 

菠薐草

           〇菠薐草寒さつのらす甘味かな

             (ほうれんそうさむさつのらすあまみかな)

             

            〇恥じらひをほんのりあかく菠薐草   河童三子 

            〇灰汁のある菠薐草の滋養かな     々

            〇菠薐草地を這うやうに育ちけり    々

 

寒潮

           〇親潮ののどぐろ旨し寒の潮

              (おやしおののどぐろうましかんのしお)

          

            〇寒潮や隠岐みる母の病み給まふ   河童三子

            〇寒潮や義母病み子病み吾が病む   々

            〇寒潮の隠岐島分けて上りゆく    々

 

二修会

           〇二修会の達陀松明飛び出でり

            (にしゅうえのだったんしょうみょうとびいでり)

             

            〇二修会の火に二月堂耐えにけり   河童三子

            〇二修会の火を見ずにをり二月堂   々

            〇二修会や廻廊走る火の懺悔     々

 

 

紀元節

             〇草も木も靡けば哀し建国日

             (くさもきもなびけばかなしけんこくび)

           

            〇紀元節二千六百八十二回目     河童三子

            〇宮中の儀式の一つ紀元節      々

            〇この国に生まれ育って建国日    々

 

落第

           〇孫落第隔世遺伝かもしれぬ

              (まごらくだいかくせいいでんかもしれぬ)

           

            〇落第や母を泣かせて子は戻る   河童三子

            〇落第の夢に藻掻きし傘寿かな   々

            〇落第や空はこんなに広いから   々

 

青木の実

            〇青木の実林の径の薄明り

              (あおきのみはやしのみちのうすあかり)

          

            〇幼児弾くピアノの音や青木の実   河童三子

            〇大き実のもっと葉大き青木の実   々

            〇もの言ひし後の淋しさ青木の実   々