蒲公英

             〇蒲公英やいつしか族の最媼

               (たんぽぽやいつしかぞくのさいおうな)

           

             〇蒲公英や綿毛となりし三姉妹    河童三子

             〇たんぽぽや先に呆けた者が勝ち   々

             〇蒲公英の今完璧な絮なりし     々

 

涅槃

           〇地獄絵もご開帳なる涅槃寺

             (じごくえもごかいちょうなるねはんでら)

         

          〇涅槃絵の遍く照らす月煌々        河童三子

          〇涅槃会の寺へ掛物届けをく        々

          〇ふくよかな蹠(あうら)重ねし涅槃仏    々

 

うららか

          〇うらうらと壁へ突っ込む車かな

             (うらうらとかべへつっこむくるまかな)

            

          〇うららかや手打ちうどんを待ってをり   河童三子

          〇麗らかや土塀緩みて曲がりをり      々

          〇麗らかや頬寄せあって道祖神       々

 

三月十一日

            〇十二回目の三月十一日

             (じゅうにかいめのさんがつじゅういちにち)

           

            〇三月十一日まためざし焼く     河童三子

            〇三月十一日珈琲を濃く       々

            〇東北は雪三月十一日        々

 

 

 

花ミモザ

          〇花ミモザ心憂き日の風見鶏

              (はなミモザこころうきひのかざみどり)

           

            〇ミモザ咲く菜の花もある爛漫   河童三子

            〇空塞ぐミモザの花に窒息す    々

            〇花ミモザ檸檬の花の地中海    々

 

春泥

             〇春泥の彳彳と行く家の前

             (しゅんでいのてきてきといくいえのまえ)

              

            〇朝練に春泥撥ねしユニホーム   河童三子

            〇牛舎の前ことに豊かな春の泥   々

            〇水掻きで家鴨が捏ねる春の泥   々

 

春の月

         〇わが地球(ほし)を月より仰ぐ春の望

             (わがほしをつきよりあおぐはるのもち)

         

          〇母と娘の明日の別れ春の月      河童三子

          〇春の月ケアーハウスに灯の入るる    々

          〇春の月あまねく影を隠すかな      々