啓蟄

          〇啓蟄や日本のロケット飛びたてづ

             (けいちつやにほんのロケットとびたてづ)

          

            〇啓蟄の地下道出れば知らぬ街   河童三子

            〇啓蟄や通勤電車から人人     々

            〇啓蟄やフルートを吹く蛇使い   々

 

 

芽吹き

           〇何の芽や平屋の前の耕三筋

             (なにのめやひらやのまえのこうみすじ)

            

           〇一人居る孤独のとなり芽吹く頃   河童三子

           〇倒木の芽は九十度曲げて出る    々   

           〇負け猫に旅始まりぬ木の芽時    々

 

 

うららか

         〇うららかや二十歳の髪を散らし切る

            (うららかやはたちのかみをちらしきる 

        

         〇うららかや術後はすこし影を行く    河童三子  

         〇うららかやゐ抱き合う道祖神かな    々

         〇うららかや車を捨てて子と歩く     々

 

  

座禅草

          〇座禅草はじめに言葉ありきとよ

             (ざぜんそうはじめにことばありきとよ)

           

            〇混沌の道教へむと座禅草    河童三子

            〇語らばや熱帯びてゐし座禅草  々

            〇寄り添ひて熱も発する座禅草  々

 

ひな祭り

            〇数うれば五十路となりぬ娘の雛

              (かぞえればいそじとなりぬこのひいな)

         

            〇久々に雛を飾りし我傘寿     河童三子

            〇人の道外さず生きよ雛まつり   々

            〇下駄箱の上に座るや土の雛    々

 

         

        

 

春兆す

            〇青春の片道切符春兆す

             (せいしゅんのかたみちきっぷはるきざす)

            

            〇春兆す雨の雫もまん丸に       河童三子 

            〇春めくと心弾むを戒める       々  

            〇キャンパスの門の弁当や春兆す    々

            

 

 

卒業

             〇黒板に未来描いて卒業す

             (こくばんにみらいえがいてそつぎょうす)

          

            〇卒業子おなご先生また泣かす   河童三子

            〇開け放つ校舎の窓に卒業歌    々     

            〇もの思ふ姿に見えし卒業期    々