冬の海

           〇座礁船残して昏るる冬の海

             (ざしょうせんのこしてくるるふゆのうみ)

           

           〇単線の駅舎に立てば冬の海      河童三子

           〇冬の海松の落ち葉を吹き寄せる    々

           〇冬海を見せて港の糶(せり)仕舞ふ    々

 

茶の花

          〇茶の花の日当たりにある無欲かな

             (ちゃのはなのひあたりにあるむよくかな)

             

            〇お茶の花今年もここに咲いている  河童三子

            〇厭わしく思ふ日もありお茶の花   々

            〇お茶の花犬跳び越えて猫くぐる   々

 

初大師

           〇初大師京に東寺の我楽多市

            (はつだいしきょうにとうじのがらくたいち)

           

            〇発心の霊山寺にて初大師     河童三子

            〇初大師餡たっぷりの鶴亀焼    々

            〇初大師歩いて知るや太子堂    々

 

大寒

            〇大寒や崖よじ登る夢の中

              (だいかんやがけよじのぼるゆめのなか)

             

              〇大寒の一日猫を見ぬ日なり   河童三子

              〇大寒スイフトを読み上機嫌  々

              〇大寒の烏やっぱり一羽でゐる  々

 

冬の月

          〇アルテミス夢乗せて行く冬の月

              (アルテミスゆめのせていくふゆのつき)

            

            〇冬の月うさぎ餅つく未来都市     河童三子

            〇この地球(ほし)の冬懐かしむ月の街   々

            〇生き生きと冬満月の蒸気かな      々

 

火事

           〇明暦の振袖火事といふ説話

             (めいれきのふりそでかじというせつわ)

           

           〇特急を田んぼに停める朝の火事    河童三子

           〇火事の後家人消息ついに知れず    々 

           〇取り合えず毛布など持ち火事見舞   々 

 

 

寒烏

            〇寒烏墨の衣に七つの子

              (かんがらすすみのころもにななつのこ

           

            〇電柱に阿々と歎息寒烏      河童三子

            〇打ち上がる鰯弔ふ寒烏      々

            〇寒烏からりと晴れし日をためぬ  々