雪女

          〇スマホ持て山降りくるよ雪女

             (スマホもてやまおりくるよゆきおんな)

           

            〇すうと来る首に冷たき雪女    河童三子

            〇混浴に雪女見し万座の湯     々

            〇夜話の後ろに座る雪女      々

凍蝶

          〇凍蝶のまだ崩れずに午後の影

            (いてちょうのまだくずれずにごごのかげ)

         

           〇凍蝶は死の形して止まりをり   河童三子

           〇凍蝶やきのふの雨の雫吸うか   々

           〇凍蝶の静かなる死の容かな    々

 

寒念仏

           〇寒念仏団扇太鼓の音と行く

             (かんねんぶつうちわだいこのおとといく)

              

             〇姉小路蛸薬師へと寒念仏     河童三子

             〇路地を出て寒念仏に加わりぬ   々

             〇寒念仏次第次第に声揃ふ     々

            

             〇大津絵の鬼に傘遣る霙かな

               (おおつえのおににかさやるみぞれかな)

              

            〇奈良びとの祖父懐かしむ霙酒    河童三子

            〇霰おく白を霙が消してゆく     々

            〇霙ふり美しきもの流しけり     々

 

松過ぎ

           〇松過ぎて届く賀状も五六枚

              (まつすぎてとどくがじょうもごろくまい)

             

            〇しっとりと時雨もよきや松過ぎし   河童三子

            〇松過ぎぬカレーに添えし福神漬け   々

            〇松過ぎて磯浦の涛音をきく      々

 

吉書

          〇傘寿なる日記のはじめ吉書とす

            (さんじゅなるにっきのはじめきっしょとす)

          

            〇醴泉銘書写する吉書筆立ちぬ   河童三子

            〇初筆や王義之の金壁の文字    々

            〇書初の筆に狸の尻尾でる     々

            

            〇皹ぐすり売る口上の筑波山

           (ひびぐすりうるこうじょうのつくばさん)

            

           〇母追ひし頬きる皹や涙の子    河童三個

           〇皹の手を机の角に掻きし日々   々

           〇踵の皹がまの油を塗りこみぬ   々