2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

九月尽

〇何くれと清算したき九月尽 (なにくれとせいさんしたきくがつじん) 〇蹴るによき石見つかって九月尽 河童三子 〇石蹴りの両足そろふ九月尽 々 〇九月尽ふけ田に足を取られけり 々

鰯雲

〇鰯雲真魚が身を投ぐ屏風岩 (いわしぐもまおがみをなぐびょうぶいわ) 〇サーディンのオイル漬けかな鰯雲 河童三子 〇衣食住足りて仰げば鰯雲 々 〇猫と見る空いっぱいの鰯雲 々

宵闇

〇宵闇やヴィオロンの音の咽び哭く (よいやみやヴィオロンのねのむせびなく) 〇宵闇にゴーシュのセロや豚の耳 河童三子 〇宵闇に解き放たれていく心 々 〇待つことの楽しみ多し宵の闇 々

亀虫

〇亀虫の木の葉隠れや青二才 (かめむしのこのはがくれやあおにさい) 〇放屁虫(へひりむし)開き直りのいぶし銀 河童三子 〇放屁虫おなご独りをあまく見し 々 〇亀虫の鼻に止まりし犬狂う 々

秋の声

〇糸電話川の向こうに秋の声 (いとでんわかわのむこうにあきのこえ) 〇日曜の朝の弦楽秋の声 河童三子 〇街路樹の実を落としゆく秋の音 々 〇秋の声塒(ねぐら)へかえる群れ烏 々

良夜

〇やまなしの落ちて流る良夜かな (やまなしのおちてながるるりょうやかな) 〇潮引いて蟹の穴にも良夜かな 河童三子 〇雪隠へ庭の良夜を隠れ行く 々 〇茶店出て良夜の街を遠回り 々

〇都追われ北山に逃ぐ貴船菊 (みやこおわれきたやまににぐきぶねぎく) 〇白菊や子の棺母は放さざる 河童三子 〇誰か待つ秋名菊の風情かな 々 〇ニコヨンの朝な夕なに野菊の道 々

曼殊沙華

〇花魁の道中倣ふ曼殊沙華 (おいらんのどうちゅうならうまんじゅしゃげ) 〇約束の刻を違えず彼岸花 河童三子 〇曼殊沙華島の焼き場に煙立つ 々 〇狐花髭ぴょんぴょんと小躍りす 々

〇新藷を火に掘り込めば坐して待つ (しんいもをひにほりこめばざしてまつ) 〇藷の蔓引いて当たりや探り掘り 河童三子 〇草燃す火藷現れて藷焼く火 々 〇蒸かし藷しくっと割れば十里かな 々

十五夜

〇十五夜や遊びに出し母を待つ (じゅうごややあそびにいでしははをまつ) 〇名月や迷堂が詠む松ヶ崎 河童三子 〇今日の月望に重なる月光冠 々 〇芋鍋の余りて有りぬ望の夜 々

虫しぐれ

〇虫時雨人形抱きし叔母を訪ふ (むししぐれにんぎょうだきしおばをとふ) 〇虫しぐれ白寿の叔母は吾を放さず 河童三子 〇主なき家深々(しんしん)と虫の夜 々 〇昼の虫主なき戸を閉じるなり 々

子規忌

〇俳人となって逝きたし子規忌かな (はいじんとなっていきたししききかな) 〇松山に坊ちゃん電車今日子規忌 河童三子 〇幾山河古こともなき子規忌かな 々 〇子規忌とて背筋伸ばしぬ机の前や 々

古蟷螂

〇残照や彫像のごと古蟷螂 (ざんしょうやちょうぞうのごとことうろう) 〇古蟷螂残党めきぬ錆刀 河童三子 〇義父に似てとぼけ貌なりいぼむしり 々 〇しのぶれど色に出にけり古蟷螂 々

牧水忌

〇黄昏のビギンしみじみ牧水忌 (たそがれのビギンしみじみぼくすいき) 〇牧水忌白鷺と目を合わせをる 河童三子 〇折り鶴の悲しからずや牧水忌 々 〇酒酌めば独りが良かり牧水忌 々

夕月夜

〇胸騒ぐショパンの曲や夕月夜 (むねさわぐショパンのきょくやゆうづきよ) 〇夕月やコンビニの灯を恋ふ案山子 河童三子 〇夕月夜バルコンに聞くノクターン 々 〇夕月夜地下鉄を出て街の上 々

敬老日

〇祝辞宣ぶ人も喜寿なり敬老日 (しゅくじのぶひともじゅうなりけいろうび) 〇とろろ蕎麦月見仕立てに敬老日 河童三子 〇この度はタオル一本敬老日 々 〇例により紅白饅頭老人の日 々

台風

〇六日目もまだ台風の線の中 (むいかめもまだたいふうのせんのなか) 〇干竿を寝かせて台風通過待つ 河童三子 〇台風のニュースに椰子の揺れ映る 々 〇台風や五軒長屋の囲い取れ 々

   蟋蟀   

〇今年また便所の裏のちちろ鳴く (ことしまたべんしょのうらのちちろなく) 〇蟋蟀が鳴いて袖引く出立かな 河童三子 〇我が家の蟋蟀の声大きかり 々 〇旅の夜の服のほつれやつづれさせ 々

秋茄子

〇秋茄子裸になって禊受く (あきなすびはだかになってみそぎうく) 〇都会の子三人増えて秋なすび 河童三子 〇秋なすび仕切り直しの花咲かす 々 〇 ニンジンの皮肉聞かさる秋茄子 々

宮相撲  

〇豊作を占う相撲神の勝 (ほうさくをうらなうすもうかみのかち) 〇禰宜の衣に軍配振るや宮相撲 河童三子 〇新米の俵積まるる宮相撲 々 〇大楠の審判長や宮相撲 々

新涼

〇新涼や今朝完了す抗がん剤 (しんりょうやけさかんりょうすこうがんざい) 〇新涼や山に向かいて縁に坐す 河童三子 〇傷病の癒える兆しや涼新た 々 〇再びのハンドル握る秋涼し 々

菊の日

〇菊の日や吾七七の重陽に (きくのひやわれしちしちのちょうように) 〇菊の日や菊酒菊の膾(なます)かな 河童三子 〇菊酒に重陽の凶打ち払う 々 〇菊の日や刺身に付きし菊を食う 々

秋蚊

〇残り蚊に病の吾を厭われし (のこりかにやまいのわれをいとわれし) 〇別れ蚊や病む身を故郷(くに)に横たふる 河童三子 〇足元にふわりと過ぎる名残の蚊 々 〇秋の蚊に諦観みえて飛びにけり 々

濁り酒

〇どぶろくを盗み呑みけり土間の隅 (どぶろくをぬすみのみけりどまのすみ) 〇どぶろくを酌みしオモニの青チョゴリ 河童三子 〇立ち呑みや白川村の濁り酒 々 〇どびろくや駅裏の灯に父探す 々

冬瓜

〇抱へ来し大冬瓜を置き行かる (かかえこしだいとうがんをおきいかる) 〇冬瓜の生い立ち語る身のいびつ 河童三子 〇孤児めいて冬瓜ゴロリ垣の下 々 〇冬瓜に怠惰の日々を送らせり 々

月夜茸

〇山毛欅の木に小鬼笑うや月夜茸 (ぶなのきにこおにわらうやつきよだけ) 〇闇汁に具の光りたる月夜茸 河童三子 〇別当の食して旨し月夜茸 々 〇月夜茸黄泉比良坂まで一歩 々

葡萄

〇レマン湖の水より淡き葡萄かな (レマンこのみずよりあわきぶどうかな) 〇チャップリンもラボーの葡萄摘みしかな 河童三子 〇イソップの狐の腹の黒葡萄 々 〇デラウェア舌打ちしたくなる一粒 々

夜長

〇独り夜の灯を点け直す夜長かな (ひとりよのひをつけなおすよながかな) 〇病床の灯を消されゆく夜長かな 河童三子 〇長き夜や壁を穿ちて耳ひらく 々 〇夜長人教授の部屋の灯は消えず 々

〇野の闇に発車のベルや星めぐり (ののやみにはっしゃのベルやほしめぐり) 〇乗り換えのホームに立てば星月夜 河童三子 〇いざ発たん今宵銀河の星めぐり 々 〇星を見る吾の如くに星もまた 々

九月

〇風易き九月の窓を開けにけり (かぜやすきくがつのまどをあけにけり) 〇今朝九月五臓六腑が水を飲む 河童三子 〇胸の創きれいに見えし九月の朝 々 〇九月の風こころ濯いでいくやうな 々