樟若葉

            〇義経の小さき鎧樟若葉

             (よしつねのちいさきよろいくすわかば

                          

            〇樟若葉緋糸ほつれし鎧かな    河童三子

            〇若葉萌ゆ三千年の大楠や     々

            〇外つ国の戦哀しき樟若葉        々  

 

          〇その昔蟇に負けたる根くらべ

             (そのむかしひきにまけたるこんくらべ)

         

           〇花やればクワンクワンと東蟇    河童三子

           〇半眼に只管打坐とや蟇      々

           〇考える振りして蟇の道なかば   々

 

 

藤の花

            〇鯉が吐く写し鏡の藤の花

              (こいがはくうつしかがみのふじのはな)

           

            〇白藤のナルシスになる池の上   河童三子

            〇藤の房触るるばかりに棚の丈   々

            〇山藤の薄紫に山の裾       々

 

燕の子

          〇生きるとは口あけること燕の子

             (いきるとはくちあけることつばめのこ)

             

            〇風強き日も子燕に戸の隙間    河童三子   

            〇予備校の庇にぎわう燕の子    々

            〇猫の目が光ってをるぞ燕の子   々

 

 

若葉

          〇短冊の句を書き換えし若葉風

             (たんざくのくをかきかえしわかばかぜ)

           

            〇盛り上がり抑えきれざる山若葉   河童三子

            〇窓若葉りんごを挿して小鳥呼ぶ   々

            〇二階から海を見ている若葉雨    々

 

昼蛙

           〇しばらくは桂郎とゐる昼蛙  

             (しばらくはけいろうといるひるがえる)

          

            〇石鎚の水は豊かに昼蛙      河童三子

            〇雨蛙あじさいの木に花乞ふる   々

            〇冷やっこ酒肴に添えて夕蛙    々

 

立夏

           〇今朝の夏平家平へ人の列

             (けさのなつへいけだいらへひとのれつ)

            

            〇夏立つや車連なる登山口     河童三子

            〇混ぜ寿司に檸檬搾って夏立ちぬ  々

            〇火を遣う太古の血潮夏に入る   々