〇蓮鉢に生まれし蛙里帰り

              (はすばちにうまれしかえるさとがえり)

          

           〇上の田の水張られるや蛙の声      河童三子

           〇疣(いぼ)蛙手引っ込めろ疣うつる      々

           〇蛙来て睡蓮鉢の賑やかし           々

 

           〇満ち欠けの朧に見えぬ月朧

             (みちかけのおぼろにみえぬつきおぼろ)

           

            〇朧船碇泊の灯の果てし無し    河童三子

            〇昨日今日訪ふ人もなき朧島    々

            〇朧夜の地震港湾の灯揺らす    々

 

風光る

             〇風光る点訳聖書読む窓辺

             (かぜひかるてんやくせいしょよむまどべ)

          

            〇女車夫曳くや道後の風光る    河童三子

            〇風光る麦畑行く使徒達は     々

            〇電柱に烏の欠伸風光る      々

 

春惜しむ

          〇未来図にドアを加へて春惜しむ

              (みらいずにドアをくわえてはるおしむ)

          

            〇山の容(かたち)雲が隠して春惜しむ  河童三子

            〇春惜しむ菜種の消えし遍路道     々

            〇熱の汗出してすっきり春惜しむ    々

 

若芝

          〇若芝を溺れるやうに子犬来る

              (わかしばをおぼれるようこいぬにくる)

        

          〇若芝のスニーカー少しひんやりと   河童三子    

          〇青芝を預言者のごと渡りをり     々

          〇若芝へ嬰児立ちそむ拍手かな     々

 

種蒔き

           〇千日紅まず一番に蒔きにけり

             (せんにちこうまずいちばんにまきにけり)  

         

           〇お手蒔きはニホンマサリの籾とある   河童三子

           〇芥子種人の心に蒔かれるや       々

           〇ヒリリと辛い大根の種蒔こう      々

 

 

葱坊主

           〇葱坊主がき大将と相まみえむ

               (ねぎぼうずがきたいしょうとあいまみえん)

         

           〇晴れる日も曇る日もあり葱坊主   河童三子

           〇お日様にほっかぶり取る葱坊主   々

           〇葱坊主海を見下す厨裏       々