初夢

     ○初夢に何やら罪を犯しをり
(はつゆめになにやらつみをおかしをり)
正夢になるかも
 秘かに抱いていること(昨日の邦訳)
 その頃、私は体調を崩して数日間寝込んだことがあった。最悪の状態から脱し、ずっと寝ていたいと思わなくなった時、しばらくの間うっとうしく感じていた寝具の中の重い物体が、実はマルセル・プルーストの「失われた時を求めて」の第一巻だということに気づいた。私は読み始めた。まだ熱があったことが影響したのかもしれないが、私は「序曲」と「コンプレー」の部分に夢中になった。繰り返し読んだ。(カズオ・イシグロ講演抜粋、愛媛新聞訳)