年の瀬を出ずれば牟岐の太平洋

 年末年始の予定をそれぞれに抱えながらも、今年最後の駅探訪は牟岐線を一泊二日かけて徳島〜甲浦(かんのうら)間30駅を旅してきました。
 出発は、未明のうちに土居ICから高速道路へあがりました。川之江のジャンクションで徳島道へ、対面道路はマイペースでもほとんど後続車のブレカーになることもなく、徳島までスムースに走れました。
 

 さて今回の行程は、国道55号線をまっすぐ南下して阿佐海岸鉄道の終着駅甲浦から牟岐線を徳島へ戻ることにしています。

甲浦(かんのうら)駅

     ◦凩と高架単線行き止まり

 終着駅というより、途中でプツンと切れてしまったという感じです。
 その線路が高架となれば一層のこと、高架の上に砂止めが盛られてそれだけで、線路が忽然となくなっているのですから極めて不安定感を与えるものでした。甲浦駅について調べてみると、土佐黒潮鉄道の奈半利駅と繋ぐ計画はあるが国鉄再建法によって凍結されたままになっているとありました。プツンと切れた印象を残しているのは、あくまで先へ延ばす意志のあることをアピールしているのかもしれないと思いました。
 
宍喰駅

 この駅は春にお遍路で来たとき、泊まる宿を尋ねようと立ち寄った所です。その時には駅の窓口は閉まって誰も居なかったのですが、今日は駅長が体を伸ばして切符の確認をする仕草をしますから、ホームの方へ上がらせてほしいと言わねばなりませんでした。やはり無人駅には無い人の温もりが感じられましたが、そこに水槽があって何故か伊勢エビも飼われていました。

海部駅

 阿波海南→浅川→鯖瀬

牟岐駅


 阿佐海岸鉄道はJR路線図で見る限り、甲浦、宍喰、海部の3駅になっているのですが、私鉄というのか第3セクターと呼ぶべきか、この辺の区別は付け難くお互いがうまく共有しているようです。
 辺川→山河内→日和佐→北河内→木岐→由岐

田井ノ浜

 木岐駅と由岐駅の間に田井ノ浜という駅があります。ここは夏の間だけ電車が停まるそうです。線路の手前から背伸びして見ると、海の波が下まで寄せているようでした。電車のホームを降りるとすぐ海水浴場につながっていると思われます。今はただ冷たい風が砂浜を削っているばかりなのでしょう。

     ◦海鳴りが飛び乗る冬の電車かな
     ◦海鳴りの聞こえる村の柚子拾ふ


 
 しばらく海岸線を走ったり山をぬけたりしながら線路は次第に内陸部へ入って行くようでした。
 阿波福井→新野→桑野→阿波橘→見能林
 見能林駅に辿り着いたときはもう4時近くになっていました。冬の夕暮れは早く風も冷たかったのでこの日はここまでとして、家を出る前にネットで調べていたホテルや民宿をあたってみて、サンシャインホテルの朝食付きに決めました。

阿南駅

 ホテルを8時前に出て、今朝は阿南駅からのスタートです。
 阿南→阿波中島→西原→羽ノ浦→立江→阿波赤石

     ◦玉葱の苗一列の冬田かな

     ◦日記書きつくして師走のこしけり


阿波赤石駅

 徳島の市街へ近づくほど駅への道は複雑になって、裏道のような小路を縫うように走らなければなりません。それでも駅の匂いはいつの間にか鋭く嗅ぎ分けられるようになっていました。自転車、ポスト、電話ボックスこれらは駅の三種の神器だと言っています。感で通りの向こうにそれらしき雰囲気を感じ取るとまさしく駅が存在しているのです。

南小松島→中田→地蔵橋→文化の森→二軒屋→阿波富田→徳島
 牟岐線の到着駅というか始発駅徳島に着いたのは昼頃になりました。
徳島駅




 帰途、雪が降りはじめました。徳島道から見る両方の山は今年最初の美しい雪化粧を見せてくれました。

     ◦小雪舞ひしばらく幼なごころかな