2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

落し水

〇魂の行方海へと落し水 (たましいのゆくえうみへとおとしみず) 〇落し水海へ流れて九月果つ 河童三子 〇落し水夜もすがら鳴る狭の村 々 〇工場に終業のベル落し水 々

新生姜

〇新生姜娶らず嫁がぬ兄妹 (しんしょうがめとらずとつがぬあにいもうと) 〇小流れに洗ひ置かるる新生姜 河童三子 〇伝道者来て新生姜の香に包む 々 〇生姜刻む窓ぽつぽつと時雨初む 々

衣被

〇はじかれて昔を忍ぶ衣被 (はじかれてむかしをしのぶきぬかつぎ) 〇衣被鉢かぶりとて器量よし 河童三子 〇塩梅の極みに白し衣被 々 〇かにかくに女の一生衣被 々

秋の声

〇 I Vow to thee, My Contry 秋の声 (我は汝に誓う、わが祖国よあきのこえ) 〇SLの湖水のほとり秋の声 河童三子 〇秋の声ピーターラビット耳立てぬ 々 〇島の山羊すそ野に食みぬ秋の声 々

蓑虫

〇蓑虫に呼び止められし秋の空 (みのむしによびとめられしあきのそら) 〇蓑虫の妻は一生家の中 河童三子 〇蓑虫や檜造りの棟上がる 々 〇蓑虫や家一軒のライフかな 々

〇二つ三つ見せて茶碗の栗ご飯 (ふたつみつみせてちゃわんのくりごはん) 〇接待の栗飯熱き札所寺 河童三子 〇山の道転がる栗を追いかける 々 〇栗飯と肉の時雨煮弁当に 々

昼の虫

〇昼の虫牧場の中のパン屋さん (ひるのむしまきばのなかのパンやさん) 〇磯浦に蜑小屋一つ昼の虫 河童三子 〇纜(ともづな)に島の渡船や昼の虫 々 〇ままごとの弟寝かせ昼の虫 々

曼殊沙華

〇曼殊沙華花魁道中村の径 (まんじゅしゃげおいらんどうちゅうむらのみち) 〇彼岸花春に無いのは不公平 河童三子 〇曼殊沙華橋の向こうは彼岸とて 々 〇彼岸花あの世は舟で渡るべし 々

秋彼岸

〇大風が二日居すわる秋彼岸 (おおかぜがふつかいすわるあきひがん) 〇秋彼岸逆縁の子に閼伽(あか)下げて 河童三子 〇秋彼岸鯨が浜に打ち上がる 々 〇逝く時は舟と思ひぬ秋彼岸 々

秋茄子

〇秋茄子一つ醜く残されて (あきなすびひとつみにくくのこされて) 〇秋茄子の早くもひねる気配かな 河童三子 〇妊娠線日々に濃くなる秋茄子 々 〇秋茄子どうしょうもなく石頭 々

稲雀

〇倒れたる稲の中から雀かな (たおれたるいねのなかからすずめかな) 〇今日の田は近江米にて稲雀 河童三子 〇稲雀今日の糧得る山田かな 々 〇健やかにまた賑やかに稲雀 々

子規忌

〇大いなる野分の中の子規忌かな (おおいなるのわけきたりししききかな) 〇玻璃を搏つ雨台風や獺祭忌 河童三子 〇手に乗せる錠剤二つ糸瓜の忌 々 〇子規の忌や一六タルト供へけり 々

敬老の日

〇敬老日スマホで遺影撮り交はす (けいろうびスマホでいえいとりかわす) 〇敬老日竜巻警報午後に出る 河童三子 〇土砂降りに風も吹き来る敬老日 々 〇敬老日コメダの珈琲ランチかな 々

牧水忌

〇牧水忌鷺下り来たる山の池 (ぼくすいきさぎおりきたるやまのいけ) 〇淋代に鷺下り立ちぬ牧水忌 河童三子 〇牧水忌辛口の酒独り酌む 々 〇真夜に覚む山脈の影牧水忌 々

秋簾

〇暮なずむ秋の簾のほつれ糸 (くれなずむあきのすだれのほつれいと) 〇うす暗き重さ宿しぬ秋簾 河童三子 〇裏道に子の声高し秋簾 々 〇秋簾障子に写す夕日かな 々

雁来紅

〇かまつかの紅にかこまれ蜑の家 (かまつかのべににかこまれあまのいえ) 〇雲水が水やりに来る雁来紅 河童三子 〇雁来紅人訪ふて留守蜑の家 々 〇鶏頭の咲いて気色を落ち着かす 々

案山子

〇道問へば振り向きもせで案山子かな (みちとえばふりむきもせでかかしかな) 〇寄合に茶も出て案山子座りをり 河童三子 〇奥祖谷に案山子の暮らす村ありぬ 々 〇案山子入籍す奥祖谷の戸籍簿 々

虫時雨

〇闇に在る底の起伏や虫時雨 (やみにあるそこのきふくやむししぐれ) 〇虫時雨ほぼ百年の闇夜かな 河童三子 〇オペラあり艶歌のありし虫時雨 々 〇深夜ラジオ消し虫時雨聞いて眠る 々

新涼

〇新涼や祖谷の吊り橋猿揺らす (しんりょうやいやのつりはしさるゆらす) 〇新涼や猿に競ひて栗拾う 河童三子 〇新涼や尊徳像のなき校庭 々 〇新涼ノ四角イ闇ヲ覗キ見ル 々

鉦叩

〇鉦叩五百羅漢の膝の上 (かねたたきごひゃくらかんのひざのうえ) 〇一つ灯を消して始まる鉦叩 河童三子 〇真夜に聞く便所の裏の鉦叩 々 〇鉦叩吾にこの世の供養にと 々

水澄む

〇水澄むや掌に汲む弘法水 (みずすむやてのひらにくむこうぼうすい) 〇貴船山水占いの水澄める 河童三子 〇さざ波を月の走りて水澄めり 々 〇海もまた水澄むところ鴎浮く 々

菊の日

〇重陽や冬瓜を煮て菊のせる (ちょうようやとうがんをにてきくのせる) 〇重陽に虹も架かりて女王逝く 河童三子 〇菊の日や刺身に菊をならべけり 々 〇重陽や四五年はまだ生きんと思ふ 々

秋の蚊

〇秋の蚊を子供が連れて戻りけり (あきのかをこどもがつれてもどりけり) 〇残る蚊の一匹赤い血の透けて 河童三子 〇秋の蚊の朝帰る戸を開けてやる 々 〇残る蚊に囁かれをる耳かゆし 々

花野

〇テントに夢覚めて朝の花野行く (テントにゆめさめてあしたのはなのゆく) 〇朝露に濡れて来る人のゐる花野 河童三子 〇寂しさに花野の朝の濡れてゐし 々 〇花野行く朝はこんなに寂しからむ 々

鳳仙花

〇鳳仙花さかせて家の寂しさよ (ほおせんかさかせるいえのさびしさよ) 〇浮腫の腕上げてゐるなり鳳仙花 河童三子 〇鳳仙花あらし去らせて日の下に 々 〇故郷をはじけて出でし鳳仙花 々

蟋蟀

◯子を返し蟋蟀の夜の長々し (こをかえしこおろぎのよのながながし) 〇雨止んでまた蟋蟀の鳴き始じむ 河童三子 〇独り寝て蟋蟀の音の闇重し 々 〇蟋蟀にまた老ひ問はれ窮しけり 々

葡萄

〇種なしも皮ごと食ふも葡萄かな (たねなしもかわくうこともぶどうかな) 〇葉が縮れ隠しおおせぬ葡萄の実 河童三子 〇一口にぶどう色ちょう色もなく 々 〇一房の爆弾めきぬ黒葡萄 々

野分

〇厄日三日め台風のUターンかな (やくびみっかめたいふうのユーターンかな) 〇芋の葉をみな裏返す野分かな 河童三子 〇いま野分の目の中にゐる寂しさか 々 〇稲刈るや野分来るとて泥濘に 々

秋の雲

〇子と上る家の裏山秋の雲 (ことあがるいえのうらやまあきのくも) 〇秋の雲たちまちガスの現れ来 河童三子 〇ふるさとに還りて老いぬ秋の雲 々 〇渓谷をぬけて出るかな秋の雲 々

二百十日

〇合わすやうに雨風の出る厄日かな (あわすやうにあめかぜのでるやくびかな) 〇雷も鳴り二百十日の雨となる 河童三子 〇早々に夕餉すませり二百十日 々 〇雲流る二十歳の髪を切る厄日 々