2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

秋めく

〇秋めくや五百羅漢に深き影 (あきめくやごひゃくらかんにふかきかげ) 〇秋めくやぶつぶつ切れし祖谷の蕎麦 河童三子 〇秋めくや女遍路の一人かな 々 〇雲辺寺空のブランコ秋めきぬ 々

〇母娘梨剥く思考まで同じ (ははむすめなしむくしこうまでおなじ 〇シーグラス拾ふ女や長十郎 河童三子 〇海を見て親子三代梨を食む 々 〇恩師来る梨を小さく切って出す 々

猫じゃらし

〇頬づりに胸がどきりと猫じゃらし (ほほづりにむねがどきりとねこじゃらし) 〇猫じゃらしある官能に目覚めけり 河童三子 〇阿蘇の夕映え金色の猫じゃらし 々 〇猫じゃらし振るやうに駆けて来る子よ 々

南瓜

〇南瓜煮る片手にスマホレシピかな (かぼちゃにるかたてにすまほれしぴかな) 〇並びをる南瓜西瓜の如く敲く 河童三子 〇南京の末生り(うらなり)順に並べられ 々 〇南京や中国哲学する輩(ともがら) 々

〇蜩や朝な夕なに吾を泣かす (ひぐらしやあさなゆうなにわれをなかす) 〇蜩や石垣高き平家住 河童三子 〇蜩や厨に匂ふ焼きなすび 々 〇かなかなと幼き吾はなき仲間 々

蟷螂

〇蟷螂の雄喰ふ雌の哀れかな (とおろうのおすくうめすのあわれかな) 〇よく見れば蟷螂の目が潤みけり 河童三子 〇蟷螂の天を仰ぎて祈るやう 々 〇かまきりの目澄みて怜悧かに見ゆ 々

秋の蝉

〇秋蝉や石山寺に経あげし (しゅうせんやいしやまでらにきょうあげし) 〇石山の石掴みをる秋の蝉 河童三子 〇腿太き乙女の像や秋の蝉 々 〇苛立ちに秋蝉の啼いてをり 々

弁慶草

〇この国の半官びいき弁慶草 (このくにのはんかんびいきべんけいそう) 〇血止め草科学立国と言われけり 河童三子 〇この道に立ち往生かな弁慶草 々 〇一つある弁慶草の泣き所 々

流星

〇最果ての浅虫の旅流れ星 (さいはてのあさむしのたびながれぼし) 〇浅虫に津軽じょんがら星流る 河童三子 〇来てみれば恐山にも夜這星 々 〇流星の巣と現れてすうっと消ゆ 々

朝顔

〇朝顔の画を描きに来る隣の子 (あさがおのえをかきにくるとなりのこ) 〇朝顔の格子を好む京町屋 河童三子 〇地を這ひし朝顔海の色見せし 々 〇朝顔の揺れて蕾の開きけり 々

夜の秋

〇夜の秋やオンザロックのカチと鳴る (よのあきやオンザロックにカチとなる) 〇老い託つ長電話かな夜の秋 河童三子 〇雨ゆきて窓開け放つ夜の秋 々 〇終章の見えぬ小説夜の秋 々

蜻蛉

〇とんぼうの帰省渋滞なかりけり (とんぼうのきせいじゅうたいなかりけり) 〇明日も出て飛べよ蜻蛉孫が来る 河童三子 〇とんぼうの番ひて飛べる水の上 々 〇とんぼうに人が学べりマスゲーム 々

残暑

〇瓜畑蔓からまりて残暑なか (うりばたけつるからまりてざんしょなか) 〇裏山の窓に貼りつく残暑かな 河童三子 〇子の宿題難問のこす残暑かな 々 〇黒猫と晩の港に残暑なほ 々

露涼し

〇芋の葉をころころまろぶ露涼し (いものはをころりころまろぶつゆすずし) 〇露涼し二階より見る今朝の庭 河童三子 〇露涼し光はしらす芋の風 々 〇草蔭に虫の声して露涼し 々

山薊

〇世を厭ふ山の薊を持ち帰り (よをいとうやまのあざみをもちかえり) 〇堅き棘一会に備ふ鬼薊 河童三子 〇そこに在る孤独地獄や山薊 々 〇山薊憂ひを霧に隠しけり 々

魂送り

〇魂送り故人の膳は下げず置く (たまおくりこじんのぜんはさげずおく) 〇麵好きに麺食べさせて魂送り 河童三子 〇瓜に来て茄子で送らる御魂かな 々 〇遅れ来た分だけ遅く魂送り 々

終戦日

〇ツクツクの鳴き始まるや終戦日 (つくつくのなきはじまるやしゅうせんび) 〇終戦日野草を食べるレシピかな 河童三子 〇アメ横に飴売られけり終戦日 々 〇終戦日闇市は夜の明けるまで 々

棚経

〇棚経の僧ハーレーを門に駐め (たなぎょうのそうハーレーをかどにとめ) 〇棚経を犬なだめつつ聞きをりぬ 河童三子 〇棚経に供へし団子烏が見る 々 〇盆棚にあの世へ戻る茄子の馬 々

迎火

〇迎火へ見知らぬ顔の古仏 (むかえびへみしらぬかおのふるぼとけ) 〇宿題に泣く子を呼びぬ盆迎へ 河童三子 〇迎火のなくても吾は違えぬと 々 〇藁燃すや一瞬の間の魂迎 々

花火

〇出し抜けの花火の音に窓へ寄る (だしぬけのはなびのおとにまどへよる) 〇あっけなく終ひとなりし遠花火 河童三子 〇コロナ禍の花火闇より揚がりけり 々 〇大花火アンドロメダの異空間 々

〇上方の熊蝉江戸を席巻す (かみがたのくまぜみえどをせっけんす) 〇朝の蝉昼の蝉へと鳴きつぎぬ 河童三子 〇唖蝉の声出す蝉へ歩み寄る 々 〇老院へ行く松原の蝉しぐれ 々

踊り

〇連の娘の指しなやかに踊りけり (れんのこのゆびしなやかにおどりけり) 〇腰据えて男踊りの静と動 河童三子 〇踊り連れて動く櫓の三味太鼓 々 〇蜂須賀さん讃えて唄う阿波踊り 々

原爆忌

○一瞬に蝉の声消ゆ原爆忌 (いっしゅんいせみのこえきゆげんばくき) ○朝顔に水やる今朝の原爆忌 河童三子 ○遠嶺に黒雲湧くや原爆忌 々 ○百年の記憶儚き原爆忌 々

西瓜

○丸ごとの西瓜切る機の無き一人 (まるごとのすいかきるきのなきひとり) ○昔日の西瓜シミーズ汚しけり 河童三子 ○思う存分西瓜食べたき傘寿かな 々 ○むざむざと西瓜転がる畑かな 々

向日葵

○向日葵を部屋に飾って死なせけり (ひまわりをへやにかざってしなせけり) ○大向日葵育てて畑の菜は窶れ 河童三子 ○向日葵の迷路の中を今も出ず 々 ○脳天気らし向日葵を演じ切る 々

広島忌

○隊列を蟻の離れて広島忌 (たいれつをありのはなれてひろしまき) ○縁あって広島にゐて広島忌 河童三子 ○原爆忌蟻にはあっという間もなく 々 ○魔法瓶壊したあの日広島忌 々

凌霄花

○凌霄の一つる霄へ遁れむと (のうぜんのひとつるそらへのがれんと) ○凌霄花夕焼け色に親しめり 河童三子 ○凌霄に朝餉の卓を覗かれし 々 ○凌霄のすぐに出たがる塀の外 々

百日草

○故郷はいつも日盛り百日草 (ふるさとはいつもひざかりひゃくにちそう) ○頑なに大工が裏の百日草 河童三子 ○百日草時代遅れの野風僧 々 ○百日草昭和に逝きし父と母 々

夏座敷

○真ん中の襖はずして夏屋敷 (まんなかのふすまはずしてなつざしき) ○真ん中に孫を寝かせる夏座敷 河童三子 ○夏座敷水平線を帆船行く 々 ○寝転べば舟底天井夏座敷 々

天牛

○天牛のショッカーのごと現れし (かみきりのショッカーのごとあらわれし) ○天牛の天にて牛になりたしや 河童三子 ○吉吉と鳴く天牛を逃しけり 々 ○天牛に全身をもて拒まれし 々