2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

金魚

○蘭鋳の尻尾退化を免れぬ (らんちゅうのしっぽたいかをまぬがれぬ) ○出目金を避けて和金へすくい網 河童三子 ○和金といふ働き者の金魚かな 々 ○発熱の外来に蘭鋳と待つ

片蔭

〇片蔭の車窓入江を曲がりけり (かたかげのしゃそういりえをまがりけり) 〇片蔭や猫眠りをる塀の上 河童三子 〇一列に工夫が憩ふ片蔭や 々 〇片蔭を選り遠回りする家路 々

羽抜鶏

〇鶏小屋の餌取る羽抜雀かな (とりごやのえさとるはぬけすずめかな) 〇口開けて肩で息する羽抜鶏 河童三子 〇羽抜鶏小屋開け渡し庭守る 々 〇砂掻いて飛び立つ助走羽抜鶏 々

旱空

〇海賊の島の空井戸旱海 (かいぞくのしまのからいどひでりうみ) 〇旱天や梅一つづつ裏返す 河童三子 〇向日葵も首垂れてをり旱空 々 〇旱魃や硫黄の川も乾きけり 々

黄金虫

〇黄金虫髑髏の中の宝地図 (おがねむしどくろのなかのたからちず) 〇ヘビメタのロックライブや黄金虫 河童三子 〇黄金虫小金を貯めて飛び立てず 々 〇コンビニのレジへ飛び込む黄金虫 々

冷奴

〇冷奴一品多き父の膳 (ひややっこいっぴんおおきちちのぜん) 〇円卓に昭和の夕餉冷奴 河童三子 〇醤油屋の味見に並ぶ冷奴 々 〇夕刻の喇叭に走る冷奴 々

揚羽蝶

〇窓過ぎる黒揚羽影残しゆく (まどよぎるくろはげはかげのこしゆく) 〇おぼろげに朝の草より夏の蝶 河童三子 〇樹の虚に隠者のごとく烏蝶 々 〇大王のごとき揚羽のそわそわす 々

河童忌

〇持て余す鼻の重さや河童の忌 (もてあますはなのおもさやかっぱのき) 〇河童忌や傘寿のいのち愛ほしむ 河童三子 〇青臭き胡瓜を齧る河童の忌 々 〇我鬼といい河童と言ひて夏に逝き 々

土用

〇鰻もて土用の丑の日を閉じる (うなぎもてどようのうしのひをとじる) 〇土用照り不定愁訴に甘酒のむ 河童三子 〇大雨も一緒に連れて土用東風 々 〇開けられて牛の匂ひの土用の日 々

茄子

〇身欠き鰊と茄子の煮びたし母の味 (みかきにしんとなすのにびたしははのあじ) 〇糠桶に母のなすびの色鮮やか 河童三子 〇茄子食ひし日の家族みな裸かな 々 〇糊ききしシミーズ着て茄子焼く母 々

夜市

〇彩やかに品品並ぶ夜市かな (あざやかにしなじなならぶよいちかな) 〇躓いて鼻緒の切れる夜市かな 河童三子 〇夜叉の面顔の後ろへ夜市の人 々 〇漆黒の闇へ広がる夜市の灯 々

白南風

〇白南風やヒッピーの全裸駆けぬく (しろはえやひっぴーのぜんらかけぬく) 〇白南風や水平線を広げけり 河童三子 〇白南風やハーレーに乗って僧来る 々 〇白南風や帆を張るやうにシーツ干す 々

木天蓼の花

〇木天蓼酒なるを飲みたし暑気あたり (またたびしゅなるをのみたししょきあたり) 〇山の猫木天蓼の花よく見えし 河童三子 〇木天蓼に猫酔うてゐる半夏生 々 〇木天蓼の花下向くな蔓橋 々

打ち水

〇打ち水が風を呼びたる小一刻 (うちみずがかぜをよびたるこいっとき) 〇行人に水打たせをる柄杓かな 河童三子 〇柄杓の手のの字のの字に水打てる 々 〇この門の渇き幾度水打つや 々

夏場所

〇名古屋場所ご贔屓筋の白絣 (なごやばしょごひいきのしろかすり) 〇城内に忍者出没名古屋場所 河童三子 〇殿様の展覧角力名古屋場所 々 〇序の口に郷土の力士夏場所 々

青柿

〇青柿や別れ話をする二人 (あおがきやわかればなしをするふたり) 〇青柿の鈴なりに成る売地かな 河童三子 〇青柿やサニブラウンの決勝へ 々 〇青柿や捕らぬ狸の皮算用 々

蜘蛛

〇蠅とり紙横目に蜘蛛の囲を架ける (はえとりがみよこめにくものいをかける) 〇蜘蛛の囲に掛かりしごとく丘の家 河童三子 〇蜘蛛の囲を科学する子の図形の線 々 〇蜘蛛の巣を笹の輪っかに蜻蛉捕り 々

パリ祭

〇銀幕に雨ふる街やパリー祭 (ぎんまくにあめふるまちやパリーさい) 〇裏街のネオンに雨のパリー祭 河童三子 〇パリー祭抱擁の街角を行く 々 〇パリ祭やオペラ座の前人を待つ 々

青葉闇

〇朽舟に波打ち寄せる青葉闇 (くちぶねになみうちよせるあおばやみ) 〇白南風や島に一人の中学生 河童三子 〇青葉闇池の鯰に見られけり 々 〇青葉闇櫓を上げてあるボートかな 々

百合

〇野の百合や首あげれば目のうるむ (ののゆりやこうべあげればめのうるむ) 〇鉄砲百合旅に憧る線路沿い 河童三子 〇百合もて見舞う病室にカサブランカ 々 〇憂ひある夢二の少女百合の花 々

跣足

〇王宮の叙事詩跣足のケチャダンス (おおきゅうのじょじしっはだしのケチャダンス) 〇蝶ネクタイに跣足で立てるバリの人 河童三子 〇文明の源にある跣足かな 々 〇跣足にて地球の呼吸感じをる 々

噴きゐ

〇山道の噴きゐに一つ金コップ (やまみちのふきいにひとつかねコップ) 〇銅山峰に噴きゐのダイヤモンド水 河童三子 〇酒蔵の庭の噴き井に夏の月 々 〇噴きゐの砂踏んで脳天突き上げる 々

〇祭鱧牡丹のごとく造られし (まつりはもぼたんのごとくつくられし) 〇鱧の貌怒り絶頂に在るごとし 河童三子 〇鱧を切る男の顔の鱧に似て 々 〇鱧よりも穴子に親し伊予の人 々

炎暑

〇大間にて鮪を食べる炎暑かな (おおまにてまぐろをたべるえんしょかな) 〇炎天に鮪の鎌を焼く煙り 河童三子 〇極楽の砂洲も炎暑の恐山 々 〇天灼けてカラカラ鳴るや風車 々

七夕

〇老いてこそ願ひ切なき笹飾 (おいてこそねがいせつなきささかざり) 〇七夕や恐山に見し風車 河童三子 〇二つ三つ書きたきことの笹飾 々 〇納得の文字に拘る笹飾 々

青葡萄

〇北の旅驟雨が搏てる青葡萄 (きたのたびしゅううがうてるあおぶどう) 〇雨の車窓北へ拡がる青葡萄 河童三子 〇青葡萄鵙けたたまし朝(あした)かな 々 〇青葡萄北の狐のほくそ笑む 々

沙羅の花

〇沙羅の花北限の旅今日おわる (さらのはなほくげんのたびきょうおわる) 〇沙羅の花白の静かであることよ 河童三子 〇今生はあの世の一日沙羅の花 々 〇旅終へて戻れば庭の沙羅散華 々

夏帽子

〇夏帽子いたこの前に吾も立つ (なつぼうしいたこのまえにわれもたつ) 〇恐山の死者にやりたし夏帽子 河童三子 〇炎天の硫黄地獄に賽の石 々 〇夏帽子大間に鮪食べる旅 々

夏の宿

〇酸ヶ湯にて術後を試す夏の宿 (すかゆにてじゅつごをためすなつのやど) 〇ビーチバレー上から眺む夏ホテル 河童三子 〇夏の宿津軽三味線聴く夕べ 々 〇かまくらを仕立てた料理夏の宿 々

山開き

〇玄関に登山靴だす山開き (げんかんにとざんぐつだすやまびらき) 〇シャモニーの夏雪踏みし登山靴 河童三子 〇天狗岳の一歩が遠し山開き 々 〇山伏の法螺貝の音や山開き 々