2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

春惜しむ

〇子雀の親を離るる惜春譜 (こすずめのおやをはなるるせきしゅんふ) 〇傘干して庭の日差しに春惜しむ 河童三子 〇惜春や腥(なまぐさ)き森入らんとす 々 〇廟門の聯(れん)の剥落春惜しむ 々

田螺鳴く

〇田螺鳴く海に広がる棚田かな (たにしなくうみにひろがるたなだかな) 〇海に棲み田螺忘れぬ田園者 河童三子 〇流寓の独りの棲家田螺鳴く 々 〇田螺鳴く海の近くに棲みながら 々

苜蓿

〇十代の空清々し苜蓿 (じゅうだいのそらすがすがしうまごやし) 〇苜蓿うしろの正面君がいた 河童三子 〇苜蓿インタナショナル歌もゆる 々 〇寝ころんで同じ夢みたクローバー 々

青麦

〇麦青むナウシカのごと少女来る (むぎあおむナウシカのごとしょうじょくる) 〇石鎚の伏流水に麦青む 河童三子 〇わが里に青麦なくも青葉風 々 〇帰省など誘ってみるや麦青む 々

呼子鳥

〇呼子鳥鳴く神なびの黒土かな (よぶこどりなくかんなびのこくどかな) 〇かの国の郭公鳴くや父母と 河童三子 〇郭公に呼び留められし雨の中 々 〇夕霞紛れて鳴くは呼子鳥 々

春窮

〇春窮の黒土に戦車地下に子等 (しゅんきゅうのこくどにせんしゃちかにこら) 〇春窮や島の港へ草の径 河童三子 〇春窮や束ね売らるる野辺の草 々 〇春窮の野辺の遊びを覚えけり 々

四月

〇雨降って憂き晴れてまた憂き四月 (あめふってうきはれてまたうきしがつ) 〇木の瘤に四月の雨を溜めてをり 河童三子 〇インフレの薄きパン焼く四月かな 々 〇泥濘の大地蹂躪する四月 々

花あざみ

〇老いてまた感傷を知る花薊 (おいにまたかんしょうをしるはなあざみ) 〇雨降れば憂ひ濃きかな花薊 河童三子 〇老いにまた感傷の日々薊咲く 々 〇花薊島に百墓と家五軒 々

子猫

〇子猫ゐると言われて土管子と覗く (こねこいるといわれてドカンことのぞく) 〇子は泣きて仔猫もどしにガード下 河童三子 〇箱の中子猫が三つ日曜市 々 〇子猫の眸一途にいのち乞いにけり 々

葱坊主

〇詰まるところ討ち死になる葱坊主 (つまるところうちじにになるねぎぼうず) 〇大仏の螺髪頭や葱坊主 河童三子 〇葱坊主隣家のむすこ中学生 々 〇ほっかぶり取れば蓬髪葱坊主 々

雲雀

〇ひろびろと麦畑より揚げ雲雀 (ひろびろとむぎばたけよりあげひばり) 〇野良猫に火事だ火事だと揚雲雀 河童三子 〇真っすぐは海へ落ちるや遠雲雀 々 〇舞雲雀リルリルリルと雲の中 々

日永

〇水槽の亀に餌やる日永かな (すいそうのかめにえさやるひながかな) 〇シーサーの一日屋根の日永き 河童三子 〇永き日や天の羽衣巌穿つ 々 〇内海に船なく凪の日の永き 々

長閑

〇のどけしや厨の窓に瀬戸の海 (のどけしやくりやのまどにせとのうみ) 〇長閑けしや夢に育む老衰死 河童三子 〇山の木のもこりもこりと長閑かな 々 〇のどけしや庭に雀の昼餉どき 々

春深し

〇春闌けし亀石の鴨川渡る (はるたけしかめいしのかもがわわたる) 〇志功描く裸女人菩薩春深し 河童三子 〇迷ひ入るアッシャー家や春深 々 〇墓石の盛り上がりてや春闌ける 々

〇蓬の句子規にもありて蓬詠む (よもぎのくしきにもありてよもぎよむ) 〇蒸しあげし蓬の緑生き生きす 河童三子 〇摘み刻の色香微妙に蓬餅 々 〇叩かれて黒き灰汁出す蓬かな 々

畦塗

〇塗終へし百の棚田に春の月 (ぬりおえしひゃくのたなだにはるのつき) 〇水引いて畦ぬって田植えまで三日 河童三子 〇畦塗やまず日焼け止め塗ってから 々 〇鉄塔の脚をめぐりて畦塗れり 々

花疲

〇あら煮きの鯛の目玉や花疲 (あらだきのたいのめだやはなつかれ) 〇缶ビールみな立ち飲みの花疲れ 河童三子 〇花疲れ迷よい子の名も放送に 々 〇満開の櫻トンネル花疲れ 々

啄木忌

〇バス停に一輪の花啄木忌 (バスていにいちりんのはなたくぼくき) 〇啄木忌背負うて母の軽ろかりき 河童三子 〇哀しきは詩人の恋や啄木忌 々 〇啄木忌胸熱く貧しさに慣れ 々

子雀

〇子雀の一年二組気になるらし (こすずめのいちねんにくみきになるらし) 〇田舎より街の子雀グルメかな 河童三子 〇黄雀の風に溺れてゐるごとく 々 〇駅前に親子の雀モーニング 々

春昼

〇春昼やかはずの声の二つ三つ (しゅんちゅうやかわずのこえのふたつみつ) 〇春昼や名もなき山の柳輝岩 河童三子 〇箸置けばすぐ目が重き春の昼 々 〇春昼やパセリ食む虫忙しき 々

春愁

〇兵馬俑首なき俑の春憂ふ (へいばようくびなきようのはるうれう) 〇春愁や首なき俑(よう)も歩きけり 河童三子 〇朝からの頭重たき春愁ひ 々 〇春愁い缶ビール開け一人かな 々

リラ咲く

〇固き麺麭抱いてリラ咲く村を行く (かたきぱんだいてリラさくむらをいく) 〇ロワールの岸辺に立つやリラの花 河童三子 〇仏蘭西はリラ英吉利はライラック 々 〇リラの花皿に冷えたるエスカルゴ 々

花まつり

〇花まつり稚児の弟母侍らす (はなまつりちごのおとうとはははべらす) 〇尼寺に独活や筍灌仏会 河童三子 〇花まつり稚児の鼻筋赤く引き 々 〇尼寺の甘茶の人気仏生会 々

花冷え

〇花冷えや診療所の窓開きて (はなびえやしんりょうしょのまどあきて) 〇今置いた受話器に残る花の冷え 河童三子 〇花冷えの机に臂を衝きしまま 々 〇トキワ荘の漫画家の訃花の冷え 々

目借時

〇筍の茹で湯こぼしぬ目借時 (たけのこのゆでゆこぼしぬめかりどき) 〇凪潮に糸垂れてゐる目借時 河童三子 〇岸壁に鷺も首垂る目借時 々 〇目借時瓦礫の上を戦車行く 々

清明

〇清明の空見上げやる犬ふぐり (せいめいのそらみあげやるいぬふぐり) 〇清明の草軟らかく引かれゐる 河童三子 〇清明の空真っすぐに鳥翔てる 々 〇清明の初筍を糠で煮る 々

亀鳴く

〇亀鳴くと罷り通りし世の愉し (かめなくとまかりとおりしよのたのし) 〇五十年子の亀飼って亀鳴くや 河童三子 〇右聾(つんぼ)左耳鳴り亀鳴けり 々 〇亀鳴くと言えば土竜(もぐら)も鳴くという 々

朝寝

〇病癒えて吾を戒む朝寝かな (やまいいえてわれをいましむあさねかな) 〇幾たびも電車行き交う朝寝かな 河童三子 〇朝寝して昨夜のラジオ鳴ってゐる 々 〇二階の子大朝寝する若さかな 々

花の雨

〇蜂須賀の阿波の殿様花の雨 (はちすかのあわのとのさまはなのあめ) 〇花の雨散歩に犬の雨合羽 河童三子 〇花の雨松園松篁母子展 々 〇シューマンの詩人の恋や花の雨 々

春潮

〇春潮や船団分かつ瀬戸の暾 (しゅんちょうやせんだんわかつせとのとん) 〇纜のともにたゆたう春の潮 河童三子 〇春潮のチヌ黒々と釣り上げる 々 〇春潮や島に一人の中学生 々