2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

三月尽

〇三月尽鯛のあら煮に山椒の芽 (さんがつじんたいのあらににさんしょうのめ) 〇余生には締め切りもなく弥生尽 河童三子 〇弥生尽酢味噌和えにす蛸を揉む 々 〇雨あがり風の残れる弥生尽 々

〇霾やインタネットの迷子かな (つちふるやインタネットのまいごかな) 〇霾晦(よなぐもり)みな兎目をしてをりぬ 河童三子 〇吹き荒ぶ黄砂と砲火北半球 々 〇よなぐもりチヌ岸壁の苔食めり 々

〇子の帰省花満開にしてしまう (このきせいはなまんかいにしてしまう) 〇竿に釣る海の花かな桜鯛 河童三子 〇凪潮に黒鯛釣るや櫻花 々 〇花の下狂わぬ極に立ってをり 々

利休忌

〇萩焼の湯呑みまた欠く利休の忌 (はぎやきのゆのみまたかくりきゅうのき) 〇一杯の白湯飲み目覚む利休の忌 河童三子 〇利休忌や一つ落としぬ白椿 々 〇野の草をお菜に添えて利休の忌 々

〇韮生るる禅寺の裏畑かな (にらうるるぜんでらのうらばたけかな) 〇ニラ卵とレバ韮のある店ランチ 河童三子 〇韮籠に薺も混じり摘まれをり 々 〇ひんやりと韮の始末に野の湿り 々

春嵐

〇杉の巣の殻出る雛に春嵐 (すぎのすのからでるひなにはるあらし) 〇夜半きて昼も過ぎけり春嵐 河童三子 〇春嵐路地の鉢みな攫い行く 々 〇春嵐船酔いに似る二階かな 々

草若葉

〇海に若布野にシロツメの草若葉 (うみにわかめのにシロツメのくさわかば) 〇草若葉干し草に飽く牛のゐて 河童三子 〇草若葉名のなき草の輝きや 々 〇日の本の阿蘇に千里の草若葉 々

若布

〇若布着て原始人とて子のふざけ (わかめきてげんしじんとてこのふざけ) 〇磯浦に漂流せしか和布刈り船 河童三子 〇磯の香の湯に取り戻す若布かな 々 〇鳴戸路の海鮮丼と若布汁 々

春雷

〇春雷の一撃にまだ目覚めざる (しゅんらいのいちげきにまだめざめざる) 〇春雷や金柑を噛む口の中 河童三子 〇金柑を煮ている窓辺春の雷 々 〇ころころと遠く艶めく春の雷 々

彼岸

〇お彼岸や治聾酒呑んで空耳に (おひがんやじろうしゅのんでそらみみに) 〇お彼岸の畔通り行く墓参り 河童三子 〇お彼岸や三日つづきの晴れ間なし 々 〇お彼岸の誰か故人を泣かす雨 々

山笑う

〇山笑ふ初役付きの辞令かな (やまわらうはつやくづきのじれいかな) 〇山笑う裾野を走る活断層 河童三子 〇余生など照っても降っても山笑う 々 〇諍いの仏が掌中山笑う 々

蒲公英

〇蒲公英や流浪の民の一里塚 (たんぽぽやるろうのたみのいちりづか) 〇たんぽぽの轢死のぞむか鉄路端 河童三子 〇国後からロシア蒲公英飛んでくる 々 〇腰を下ろせば蒲公英の道しるべ 々

沈丁花

〇行き過ぎて沈丁の香に振り返る (いきすぎてちんちょうのかにふりかえる) 〇沈丁花経読む僧の背を覗く 河童三子 〇住職の衣の触るる沈丁花 々 〇沈丁花寺の厨房香の無きや 々

薺花

〇又ここに白い薺の花が咲く (またここにしろいなずなのはながさく) 〇遺句集や薺の花の挿しおかる 河童三子 〇何処(いずく)にも流寓の民薺花 々 〇ぺんぺんと子は跳びはねる鼓草 々

紅梅

〇紅梅の林をぬけて約束の地 (こうばいのはやしをぬけてやくそくのち) 〇紅梅や小鳥の歌も稍々なれて 河童三子 〇紅梅に囲まれてある少年院 々 〇紅梅に八堂山の晴れ姿 々

春の雷

〇春雷や宮の大楠割りて落つ (しゅんらいやみやのおおくすわりておつ) 〇春の雷ポンペイの買春の跡 河童三子 〇犬つるむポンペイ遺跡春の雷 々 〇ポンペイの春雷避けしカメオの店 々

春光

〇春光を孕ませ寄り来波頭 (しゅんこうをはらませよりくなみがしら) 〇山里の俄かに明ける春の色 河童三子 〇ほうほうと山もり上がる春光 々 〇春光が木立の中を走りけり 々

土筆

〇昼摘みし土筆を夜の袴取り (ひるつみしつくしをよるのはかまとり) 〇戦争は土筆を踏みて進みけり 河童三子 〇おお空へ螺髪ならべるつくづくし 々 〇土筆摘む手目は先の土筆見ている 々

ミモザ

〇丘の上の鐘に誘わるミモザ雨 (おかのうえのかねにさそわるミモザあめ) 〇丘の上に約束の黄のミモザ咲く 河童三子 〇金の鈴万を揺るすや花ミモザ 々 〇花ミモザ雨滴を抱く潤みかな 々

佐保姫

〇佐保姫の思わせぶりに風邪の人 (さほひめのおもわせぶりにかぜのひと) 〇佐保姫を待つ東北の神武(ずんむ)たち 河童三子 〇佐保姫の今朝織り上げし衣霞 々 〇佐保姫のご機嫌ななめ今朝の風 々

〇猫バスのトトロの森の雉子鳴く (ねこバスのトトロのもりのきぎすなく) 〇青年の今朝の門出に雉子鳴く 河童三子 〇切なさに赫き貌した雉の行く 々 〇雉鳴くや今朝旅立ちの日なりけり 々

卒業

〇詰襟の薔薇を凛々しく卒業す (つめえりのばらをりりしくそつぎょうす) 〇風呂場より校歌聞こえる卒業期 河童三子 〇本気出せと檄たまわって卒業す 々 〇女子大の記念館にて博士授与 々

涅槃

〇大根の涅槃にトマト芋茄子 (だいこんのねはんにトマトいもなすび) 〇涅槃図や種の悉く集まれり 河童三子 〇若冲の涅槃図蕪哭きにけり 々 〇涅槃図に猫も描けよとお釈迦さま 々

青饅

〇青饅の菜は野辺からのもらひ物 (あおぬたのなはのべからのもらいもの) 〇青饅の胡麻味噌よかり辛よし 河童三子 〇野の草を青饅にするレシピかな 々 〇饅にする青菜を裏の瀬に洗う 々

目刺

〇目刺焼く常の日なりしミサイル飛ぶ (めざしやくつねのひなりしミサイルとぶ) 〇慎ましく目刺を焼いて暮らしをり 河童三子 〇どんどんと無口になりて目刺焼く 々 〇目刺焼く何か食べねば生きられぬ 々

啓蟄

〇啓蟄や亀を起こして洗ひやる (けいちつやかめをおこしてあらいやる) 〇啓蟄や砂浜に穴あるわあるわ 河童三子 〇啓蟄や老女二人も縁に出て 々 〇啓蟄の日の長々と山の端 々

春一番

〇春一番伝道の書を繙けば (はるいちばんでんどうのしょをひもとけば) 〇春一番港の糶の声奪う 河童三子 〇長髪の女狂わす春一番 々 〇春一番一瞬小鳥消えにけり 々

青き踏む

〇海を見る終の棲家や青き踏む (うみをみるついのすみかやあおきふむ) 〇旅人に庭の青きを踏ませ行く 河童三子 〇イギリスの湖水地方の青き踏む 々 〇犬よりも吾が夢中の青き踏む 々

雛の日

〇白酒をひとりに酌むや雛の日 (しろざけをひとりにくむやひいなのひ) 〇雛の日娘に記しおく吾始末 河童三子 〇雛の娘や和暦を三つ重ね生く 々 〇ミサイルが街焼く炎雛の日 々

〇金毘羅へ行く街道の霞かな (こんぴらへいくかいどうのかすみかな) 〇金毘羅の女神の掛ける春霞 河童三子 〇さぬき路の霞の中のレタスかな 々 〇環り行く漢の背や朝霞 々