2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

土用あい

〇病む胸のくぼみ哀しき土用あい (やむむねのくぼみかなしきどようあい) 〇故郷は鱚釣る頃や土用あい 河童三子 〇瀬戸内に強き波くる土用あい 々 〇土用あい望郷の念押し迫る 々

雲の峰

〇雲の峰丹波太郎が大暴れ (くものみねたんばたろうがおおあばれ) 〇雲の峰比叡三郎京襲う 河童三子 〇囲まるるロープウエーや雲の峰 々 〇雲の峰やがて轟く雷神に 々

土用鰻

〇鰻焼く備長炭の熾りかな (うなぎやくびんちょうたんのおこりかな) 〇思い直し土用鰻の列離る 河童三子 〇鰻焼く匂ひ貰いて夕餉かな 々 〇明日からはただの鰻と思いきや 々

冷し麺

〇冷し麺細ければ喉詰まりけり (ひやしめんほそければのどつまりけり) 〇広島のもみじ散らせる冷素麺 河童三子 〇素麺を洗うその手で啜りけり 々 〇素麺の喉越し踊り喰いのごと 々

玉虫

〇玉虫や長者殺めてしまいけり (たまむしやちょうじゃあやめてしまいけり) 〇玉虫の朝や夕やと談合す 河童三子 〇玉虫や虹は詩の彩憂い色 々 〇玉虫の全き一つ尊かり 々

氷水

〇琥珀色にオンザロックの流氷よ (こはくいろにオンザロックのりゅうひょうよ) 〇かち氷ひさいで回る甲子園 河童三子 〇大氷河穿ちて呑みぬ氷水 々 〇氷河期を掘ればマンモス氷漬け 々

水中花

〇さり気なく男の部屋の水中花 (さりげなくおとこのへやのすいちゅうか) 〇若き日の夢すさびゆく水中花 河童三子 〇世と共に移りゆかんや水中花 々 〇水中花この星にみな朽ちしもの 々

河童忌

〇河童忌やフンコロガシの一途なり (かっぱきやフンコロガシのいちずなり) 〇足を曳く底なし沼や河童の忌 河童三子 〇河童忌や鯰の髭は口の端 々 〇混沌は朝の珈琲河童の忌 々

線香花火

〇終焉の線香花火離れ得づ (しゅうえんのせんこうはなびはなれえず) 〇線香花火全き闇の息しずか 河童三子 〇手花火や線香の灯を惜しみけり 々 〇かくもある線香花火果つやうに 々

蜻蛉

〇萍や羽黒トンボの神さまと (うきくさやはぐろトンボのかみさまと) 〇浮き草に神の宿りし黒蜻蛉 河童三子 〇子の箒シオカラトンボ追い回す 々 〇雌はみなお歯黒になる黒蜻蛉 々

茄子

〇ぬか床の塩梅もよし茄子の紺 (ぬかどこのあんばいもよしなすのこん) 〇茄子好きが高じし果ての折戸茄子 河童三子 〇茄子植えて朝から花を数えけり 々 〇亡夫乗るかつるつる滑る茄子の馬 々

夏草

〇夏草を踏んで行者の貌になる (なつくさをふんでぎょうじゃのかおになる) 〇蓮華笠青草を分け走りゆく 河童三子 〇夏草の隠しおほせぬ獣道 々 〇青草や脛に残れる疵のあと 々

瀑布

〇鰻屋の拵え滝やせいろ蒸 (うなぎやおこしらえたきやせいろむし) 〇瀑布背に逆光へ向く人を撮る 河童三子 〇滝音に蕎麦啜る音加えけり 々 〇びょうびょうと飴のばしをり那智の滝 々

蝉しぐれ

〇幾星霜今生にあり蝉しぐれ (いくせいそうこんじょうにありせみしぐれ) 〇ヨセミテの樹々また樹々の蝉しぐれ 河童三子 〇降り立てばホーム一杯蝉しぐる 々 〇蝉しぐれ歩けば横に山頭火 々

日傘

〇夭折の妹が棺に花日傘 (ようせつのいもがひつぎにはなひがさ) 〇日傘持たず仕事を提げて走るかな 河童三子 〇砂日傘波に攫われ漂いて 々 〇絵日傘やラフレシア咲く植物園 々

箱庭

〇箱庭や如雨露の水に川溢る (はこにわやじょうろのみずにかわあふる) 〇箱庭に昔の夢のつづき置く 河童三子 〇箱庭や百年前の人がゐて 々 〇水吹けば箱庭の町虹架かる 々

班猫

〇此の先はもう班猫の道連れに (このさきはもうはんみょうのみちづれに) 〇道教え村へ楽隊連れて来る 河童三子 〇班猫の往ったり来たり道迷う 々 〇班猫に誘われて行く深山かな 々

甲虫

〇甲虫不夜城の街さ迷いぬ (かぶとむしふやじょうのまちさまよいぬ) 〇甲虫創りし神は戦好き 河童三子 〇遺伝子に闘う形甲虫 々 〇毒舌の兜太も逝くや甲虫 々 金子兜太遺句集の『百年』後編に ━寒紅梅毒舌猥舌の日々ぞ━という句があるらしい。(未読) 亡…

〇鯖鮨に鱧鮨ならぶ京祭 (さばずしにはもずしならぶきょうまつり) 〇漆黒の鮨桶光るもの盛られ 河童三子 〇光りもの盛る鮨桶の漆黒に 々 〇京にゐて鱧鮨旨き季となる 々

〇落雷や賀茂の神社の大樹燃す (らくらいやかものじんじゃのたいじゅもす) 〇日雷稲の穂伸ばし走りゆく 河童三子 〇日雷草食む牛の訝る目 々 〇戒むること多々ありて雷鳴りぬ 々

木下闇

〇木の晩や十基ゐならぶ僧の墓 (このくれやじゅっきいならぶそうのはか) 〇托鉢の僧戻り行く木下闇 河童三子 〇緑陰や小さな池に空の色 々 〇木の晩(このくれ)に右往左往の狸かな 々

夜店

〇夜店に並ぶ古本の地べたかな (よみせにならぶふるほんのじべたかな) 〇古本を夜店に買うは小公子 河童三子 〇セルロイドの月光仮面夜店の子 々 〇境内の夜店芋茎(ずいき)の神輿見せ 々

睡蓮

〇睡蓮愛で軽袗の尼跔みをり (すいれんめでかるさんのあまかがみをり) 〇睡蓮の眠る深さに吾は病み 河童三子 〇睡蓮の眠れる午後の浄土かな 々 〇睡蓮の闇の底より出て咲ける 々

桃葉湯

〇桃の湯や山男らのしわぐ声 (もものゆややまおとこらのしわぐこえ) 〇楊貴妃も身を鎮めるや桃葉湯 河童三子 〇桃葉湯枇杷の葉よりも艶めかし 々 〇桃の湯を独り使いし病む身かな 々

天瓜粉

〇天瓜粉開けて孫の香甦る (てんかふんあけてまごのかよみがえる) 〇天瓜粉その後は知らぬ蒙古斑 河童三子 〇天瓜粉大学生の孫待てり 々 〇思い出に行水あとの天瓜粉 々

〇鱧食べて強き目力貰いけり (はもたべてつよきめぢからもらいけり) 〇鯖寿司良き鱧寿司も良き祭かな 河童三子 〇早々と錦市場に鱧の貌 々 〇鱧食べて京の暑さを恨みけり 々

沙羅の花

〇葉隠れに一日を清き沙羅の花 (はがくれにひとひをきよきしゃらのはな) 〇沙羅の花恋は偲びて了るもの 河童三子 〇潔く散る武士道や沙羅の花 々 〇白に咲く死に装束の沙羅の花 々

影絵

〇晩飯をかき込み走る影絵見に (ばんめしをかきこみはしるかげえみに) 〇彩のなき影絵に恐れ泣く子かな 河童 〇影絵の子かごめかごめの影丸し 々 〇過ぎし日や影絵のごとく截をかる 々

合歓の花

〇合歓の花病臥す吾ともの憂ひ (ねむのはなやみふすわれとものうれい) 〇お隣の黄色い車合歓咲くや 河童三子 〇合歓咲くや花火中止の報ありし 々 〇葉の眠る夜に開くや合歓の花 々

夏帽子

〇夏帽に日避け人避け世間避け (なつぼうにひよけひとよけせけんさけ) 〇経木帽被って軽く見ゆ頭 河童三子 〇寅さんの失恋隠す経木帽 々 〇夏帽子俯く癖の儘被る 々