2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

三月尽

○引きこもる子も引っこ抜き三月尽 (ひきこもるこもひっこぬきさんがつじん) ○春の菜も切り倒されて三月尽 秋甫 ○三月尽明日は明日の光かな 々 ○髪伸びしまま出立や三月尽 々

山笑う

○洛北の妙法文字の山笑う (らくほくのみょうほうもじのやまわらう) ○北山の法を崩して山笑う 秋甫 ○山笑ふ嵐山から愛宕山 々 ○東山三十六峰山笑ふ 々

花時

○花びらも帽子も好きで河岸の風 (はなびらもぼうしもすきでかしのかぜ) ○花時のいたずらに火照りのぼせし 秋甫 ○一陣の風が攫ひぬ櫻花 々 ○櫻舞ふ下に行く度佇めん 々

木の芽雨

○ステンドグラス愛撫するかに木の芽雨 (ステンドグラスあいぶするかにきのめあめ) ○コンビニの列に並びぬ木の芽雨 秋甫 ○木の芽雨日曜の朝は正午から 々 ○若者の朝寝に添いぬ木の芽雨 々

青き踏む

○青き踏むホスピスの建つ敷地かな (あおきふむホスピスのたつしきちかな) ○旅立ちの柔らかき歩や青き踏む 秋甫 ○青き踏むあうらの冷えも快き 々 ○青き踏む最晩年は丘の上 々

春埃

○自転車のサドルに今朝の春埃 (じてんしゃのサドルにけさのはるほこり) ○ビリケンの目に春塵の映りをり 秋甫 ○春塵と言えば大阪天王寺 々 ○賭け将棋する人見る人春埃 々

土筆

○父母眠るやも知れぬ野の土筆摘む (ふぼねむるやもしれぬののつくしつむ) ○他人と見るフェンスの中の土筆かな 秋甫 ○一握の土筆包まるふるさと便 々 ○熊野古道中辺路に摘みし土筆よ 々

三月

○三月や空から芽吹く大欅 (さんがつやそらからめぶくおおけやき) ○三月の母の気鬱や空の巣よ 秋甫 ○三月の母に涙の色二つ 々 ○三月や啐の声聞き母啄す 々

春の雲

○春の雲とて二つづつ流れけむ (はるのくもとてふたつづつながれけむ) ○東山ふとん掛けたる春の雲 秋甫 ○スーパーの床屋を出れば春の雲 々 ○春の雲留守電に聞く恩師の声 々

薺咲く

〇薺咲き三味線鳴らす日の近し (なずなさきしゃみせんならすひのちかし) 〇薺咲く野に音曲の満ち満ちて 秋甫 〇われら皆薺花とて身の泰し 々 〇菜の花の摘まれ薺すて置かれけり 々

春嵐

〇春嵐みな寄り合ふや吹き溜まり (はるあらしみなよりあうやふきだまり) 〇春嵐地下鉄サリン事件思ふ 秋甫 〇振袖の袂舞上ぐ春旋風 々 〇春嵐巣立つ子の荷纏まらず 々

春分

〇春分の日の野球シーソーゲーム (しゅんぶんのひのやきゅうシーソーゲーム) 〇彼岸櫻疎水の前のレストラン 秋甫 〇彼岸桜京大のある一隅に 々 〇春分の日のお墓参りと合格祝 々

諸喝采

〇名が先にひとり歩きし諸喝采 (ながさきにひとりあるきししょかっさい) 〇疎まれることなど平気諸喝采 秋甫 〇たかが大根花されど諸喝采 々 〇路線図の境界越えて諸喝采 々

沈丁花

〇術後の胸沈丁の香を吸い込めぬ (じゅつごのむねちんちょうのかをすいこめぬ) 〇沈丁の門を離れてより匂ふ 秋甫 〇沈丁やまあるく刈られ円に咲く 々 〇沈丁の香の遠からず近からず 々

鳥の恋

〇工場の休み時間や鳥の恋 (こうじょうのやすみじかんやとりのこい) 〇鳥つるむ土手に手話する二人かな 秋甫 〇恋雀村が乗り出す出会いの場 々 〇鳥の恋川の両岸敵ばかり 々

〇霞の底洛中の絵図動きけり (かすみのそこらくちゅうのえずうごきけり) 〇修学院離宮の下の朝霞 秋甫 〇東山寺々連ね夕霞 々 〇段々畑霞に隠す糧の采 々

白木蓮

〇地に落ちて穢れ早けり白木蓮 (ちにおちてけがれはやけりしろもくれん) 〇祈りの手天へ差し出す白木蓮 秋甫 〇空仰ぎ胸膨らます白木蓮 々 〇白蓮の浄土は天に在りしかや 々

比良八講

〇鮒ずしの糀飛び散る比良八講 (ふなずしのこうじとびちるひらはっこう) 〇身を斬らる琵琶湖哀歌や比良颪 秋甫 〇八講が帽子飛ばせば今津まで 々 〇八講や魞の諸子を攫いけり 々

春時雨

〇自販機にコイン押し込む春時雨 (じはんきにコインおしこむはるしぐれ) 〇さくら咲く便りの中の時雨かな 秋甫 〇春しぐれ万端尽きて沙汰待ちぬ 々 〇新調の靴また仕舞う春時雨 々

涅槃図

〇涅槃図の猫も鼠も仲よかり (ねはんずのねこもねずみもなかよかり) 〇手枕に旅の途中の涅槃仏 秋甫 〇涅槃寺の遺品の並ぶ供物檀 々 〇病得て吾も手枕涅槃仏 々

三月十一日

〇三月十一日目刺焼いてゐた (さんがつじゅういちにちめざしやいていた) 〇忘れ得ぬ一つに春の震災忌 秋甫 〇大津波逃れし櫻木の芽立つ 々 〇三月十一日三陸わかめ買う 々

鶴引く

〇やうやうに数そろいたる鶴引くや (やうやうにかずそろいたるつるひくや) 〇なべ鶴の鳴いて帰るやみすずの空 秋甫 〇鶴引いて小鳥そわそわ仕始める 々 〇鶴帰る里の俄かに忙しなく 々

独活

〇東京の地下に広がる独活畠 (とうきょうのちかにひろがるうどばたけ) 〇野の独活を切れば涙を零しけり 秋甫 〇砥部鉢へしずかに盛らる白き独活 々 〇山独活の旬越えて空威張りのみ 々

啓蟄

〇啓蟄の遅速に大小神の意図 (けいちつのちそくにだいしょうかみのいと) 〇啓蟄や蛙マークの引っ越し車 秋甫 〇啓蟄を疑わず待つ心かな 々 〇啓蟄の後に虚ろな穴ばかり 々

春泥

〇車から牛春泥へ走り出す (くるまよりうししゅんでいへはしりだす) 〇引っ越しの車春泥持って来る 秋甫 〇マトリョーシカの裾春泥に汚れけり 々 〇春泥を赤の広場へ付けて来る 々 脱力感甚だしい。あとの二句はロシア旅行の思い出より。

畦焼き

〇故郷は畦焼く煙棚引く頃 (ふるさとはあぜやくけむりたなびくころ) 〇畦焼きの中より現るる君が顔 秋甫 〇君見しか今朝の畦焼く煙真白 々 〇畦焼きの真白な煙君が方へ 々 浣腸と塗り薬で急場をしのぐ。体調悪し。

鶯菜

〇あどけない嘴白き鶯菜 (あどけないくちばししろきうぐいすな) 〇うぐいす菜思わせる娘が女医として 秋甫 〇冷凍の食事で済ます鶯菜 々 〇浅漬けの鶯色のうぐいす菜 々 便秘に苦しむ。

名残雪

〇あれこれと里の便りや名残雪 (あれこれとさとのたよりやなごりゆき) 〇名残雪馬現れて農急ぐ 秋甫 〇残雪の富士は紫紺に球子の画 々 〇なごり雪イルカの歌も卒業期 々 京大病院を退院する。

雛の日

〇昔日の園児の君が雄雛かな (せきじつのえんじのきみがおびなかな) 〇雛寿司の病院食に雛あられ 秋甫 〇病窓を綺麗に拭かる雛(ひいな)の日 々 〇ぼんぼりが回れば唄うひなまつり 々

三月

〇三月の告白釦すでに無 (さんがつのこくはくぼたんすでになし) 〇三月や泥雪のエルミタージュに 秋甫 〇三月や髪染めること終わりにす 々 〇雨風に心揺るぎぬ三月よ 々