2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

月光

〇月光の仮面もて月よりの使者 (げっこうのかめんもてつきよりのししゃ) 〇月光は手を高らかに挙げて弾け 秋甫 〇月光や葡萄の蔓を慕い来る 々 〇長き影短き影も月明り 々

〇芒穂をみな右向けて風通る (すすきほをみなみぎむけてかぜとおる) 〇芒穂が漢の肩をそっと押す 秋甫 〇狐の尾ぴょんと返れば尾花にも 々 〇鬼芒狐に殺らる鴨一羽 々

秋寒

〇そぞろ寒入院の荷を検める (そぞろさむにゅういんのにをあらためる) 〇鶏がらの身をそそぎ取るそぞろ寒 秋甫 〇口すすぐ水の歯に染むそぞろ寒 々 〇日の翳り庭の花にやそぞろ寒 々

秋の声

〇診察の老婆が返事秋の声 (しんさつのろうばがへんじあきのこえ) 〇鎌切の針虫出でし秋の声 秋甫 〇秋の声終活ノート検(あらた)める 々 〇終焉を想い描きし秋の空 々

曼殊沙華

〇人間の乳房なくせり曼殊沙華 (にんげんのちぶさなくせりまんじゅしゃげ) 〇曼殊沙華胸の炎の燃え出る 秋甫 〇明王の怒りの貌や曼殊沙華 々 〇地下室の棚に毒薬曼殊沙華 々

秋の雨

〇いま生るる綾のえにしに秋の雨 (いまうるるあやのえにしにあきのあめ) 〇一日を止んだり降ったり秋の雨 秋甫 〇秋雨の家の前なる潦(にわたずみ) 々 〇秋霖の霞の中に身を閉ざす 々 岸田メディカルクリニックを受診 マンモグラフィー、エコー造影、など…

螻蛄鳴く

○螻蛄鳴くや街灯切れし辻の道 (けらなくやがいとうきれしつじのみち) ○耳鳴りかお螻蛄鳴くのか夜長し 秋甫 ○耳切られお螻蛄は夜を鳴き明かす 々 ○お螻蛄なく洋燈明かりに異国妻 々

秋天

〇秋天や南海にいま嵐生る (しゅうてんやなんかいにいまあらしうる) ○手術日を決め秋空の道帰る 秋甫 ○秋天を蹴って鉄棒逆上がり 々 ○秋天へ弧を描き雑魚を釣り上げる 々

芋畑

〇芋畑鍬突き立てて月出でぬ (いもばたけくわつきたててつきいでぬ) 〇里芋の絆に固き三世代 秋甫 〇里芋は子芋が主役まるまると 々 〇畑に挿すパラソル赤し芋の秋 々

敬老日

〇敬老の日や不意打ちに花火揚がる (けいろうのひやふいうちにはなびあがる) 〇老人の日独り暮らしにやや疲れ 秋甫 〇指先にスクロールする老人の日 々 〇老人の日のぼんやりとある不安 々

莢隠元

〇煮南瓜の莢隠元にほっとして (にかぼちゃのさやいんげんにほっとして) 〇莢隠元の筋通す筋もなく 秋甫 〇ささげなる隠元豆の名僧めく 々 〇京野菜ザイルのやうにささげ持つ 々

子規忌

〇仏滅の次は大安今日子規忌 (ぶつめつのつぎはたいあんきょうしきき) 〇鏡台に糸瓜の水も獺祭忌 秋甫 〇子規と虚子芭蕉と蕪村今日子規忌 々 〇

猿酒(ましらざけ)

〇奥祖谷に平家の影やましら酒 (おくいやにへいけのかげやましらざけ) 〇木の洞はいま猿酒を醸すらん 秋甫 〇飽き足らず猿酒を酌む夢のなか 々 〇ましら酒呑んで羆(ひぐま)の踊りだす 々

牧水記

〇青鷺の海を見てゐる牧水忌 (あおさぎのうみをみているぼくすいき) 〇独り酒燗も良かりき牧水忌 秋甫 〇釣り人と山の話に牧水忌 々 〇牧水忌酒は静かに呑むべかり 々

花野

〇霧はれて牛現るる大花野 (きりはれてうしあらわるるおおはなの) 〇日照り雨牛の草食む大花野 秋甫 〇花野行く昔の径に鳥兜 々 〇ニンフらの祈り捧げる大花野 々

雁来紅(かまつか)

〇鎌柄と呼ばれて憮然炎え出る (かまつかとよばれてぶぜんもえいずる) 〇蜑(あま)小屋の雁来紅が道標 秋甫 〇奸婦かと近寄り難き雁来紅 々 〇家先に緋の垣をなす葉鶏頭 々

案山子

〇マネキンの借りだされたる案山子かな (マネキンのかりだされたるかかしかな) 〇案山子田に雀集いて親しめり 秋甫 〇道問えば案山子が指しぬ山の家 々 〇バスを待つ案山子のための停留所 々

蟋蟀

〇蟋蟀の雨を抗い鳴きにけり (こおろぎのあめをあがらいなきにけり) 〇蟋蟀に目覚めて稿を書き進む 秋甫 〇古里は叔母も独りのちちろ鳴く 々 〇ちちろ鳴く祖母の添い寝に過ぎし夜 々

飛蝗(ばった)

〇愛おしくきちきちの肢そろえ持つ (いとおしくきちきちのあしそろえもつ) 〇負んぶ飛蝗(ばった)健やかなるも病む時も 秋甫 〇背負われて夫は精霊飛蝗かな 々 〇夫乗せて負んぶ飛蝗の貌安し 々

鰯雲

〇母を待つ外に夕暮れの鰯雲 (ははをまつとにゆうぐれのいわしぐも ) 〇鰯雲暮れ逝く空の陰多く 秋甫 〇ハーモニカ吹く淀川の鰯雲 々 〇鰯雲空の七輪熾りだす 々

厄日

〇二百二十日台風二つたてつづく (にひゃくはつかたいふうふたつたてつづく) 〇蝋燭の灯に缶詰開けしジェーン台風 秋甫 〇ジェーン台風マリリンもオードリもゐて 々 〇草上の卓の絆や台風一過 々 六歳の時に体験したジェーン台風は今でもしっかり覚えてい…

西鶴忌

〇西鶴忌大阪気質懐かしき (さいかくきおおさかかたぎなつかしき) 〇西鶴忌詠みに詠んだや二万翁 秋甫 〇西鶴忌今もあんじょうやってます 々 〇好色む鳥の教えに西鶴忌 々

〇梨園に長十郎の掌(たなごころ) (なしえんにちょうじゅうろうのたなごころ) 〇梨園も長十郎も古に 秋甫 〇幸水剥く吾頬に秋の風 々 〇梨剥くや次第次第に器量良し 々

夜長

〇囁きは深夜ラジオの長き夜 (ささやきはしんやラジオのながきよる) 〇眠られぬ夜長の独り恣(ほしいまま) 秋甫 〇検(あらた)めて聖書繙く夜長かな 々 〇長き夜の風入れしまま灯を消ぬ 々

蓑虫

〇蓑虫の嘆き此処では無い何処か (みのむしのなげきここではないどこか) 〇蓑虫の女の哀れ蓑一枚 秋甫 〇蓑虫のテキスタイルとファブリック 々 〇蓑虫や樽の哲人ディオゲネス 々

秋刀魚

〇秋刀魚焼く排気口より煙嗅ぐ (さんまやくはいきこうよりけむりかぐ) 〇秋刀魚焼く積りが目刺買いにけり 秋甫 〇秋刀魚漁かの故郷は北上す 々 〇どれほどの愛着も無き新秋刀魚 々

秋の潮

〇古の合戦場を秋の潮 (いにしえのかっせんじょうをあきのしお) 〇秋の潮停泊船を眠らせる 々 〇秋の潮南の空に低気圧 々 〇北緯三十度守るや秋の潮 々

秋簾

〇奥の間のテレビ映像秋簾 (おくのまのテレビえいぞうあきすだれ) 〇誰か弾く別れの曲や秋簾 秋甫 〇秋すだれ竹の日焼けに古びけり 々 〇倦怠のうちの暗闇秋簾 々

鈴虫

〇鈴虫や野分近づく草の闇 (すずむしやのわきちかづくくさのやみ) 〇去年放ちし鈴虫の音増えてをり 秋甫 〇野分近し鈴虫の声闇にゆるる 々 〇鈴虫の止みて野分の雨となり 々

初月

〇初月や不眠の夜の白光土 (はつづきやふみんのよるのはっこうど) 〇初月の少し窶れし面影に 秋甫 〇初月や準備中ですレストラン 々 〇初月の銀河鉄道停車駅 々