2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

風鈴

○風鈴を北と南に海の町 (ふうりんをきたとみなみにうみのまち) ○海の凪れば風鈴も凪にけり 秋甫 ○風鈴の止み蝉の音に満たされる 々 ○リンと一鳴り風鈴の不燃焼 々

孑孑

○孑孑のぴこんぴこんと尻振りぬ (ぼうふらのぴこんぴこんとしりふりぬ) ○尻で息する孑孑の逆さかな 秋甫 ○ぼうふりに鬼と呼ばれる角が出て 々 ○ぼうふりのシンクロナイズして逆さ 々

夏越

○太鼓うつ禰宜笛吹く禰宜や夏祓 (たいこうつねぎふえふくねぎやなつはらえ) ○傘さして舞妓茅の輪をくぐりけり 秋甫 ○ゆだち止み夏越露店の動きだす 々 ○八百万神の結界茅の輪越ゆ 々

冷素麺

○冷素麺啜って午後のサスペンス (そうめんをすすってごごのサスペンス) ○加茂川という素麺の真っすぐに 秋甫 ○揖保素麺細きに喉を詰まらせる 々 ○冷素麺兄と一本取り合へり 々

玉虫

○玉虫の彩に仏の心かな (たまむしのいろにほとけのこころかな) ○玉虫を母は箪笥に隠し持つ 秋甫 ○玉虫を手にして心休まらず 々 ○玉虫や娘は足爪を塗りにけり 々

含羞草

○草の根のまずは護身の含羞草 (くさのねのまずはごしんのおじぎそう) ○草々に知恵とて在りぬ含羞草 秋甫 ○含羞草渡る世間に鬼ゐても 々 ○含羞草夕暮れはもう寝る仕度 々

西日

○日曜は西日に醒めし四畳半 (にちようはにしびにさめしよじょうはん) ○スフィンクスに四千年の大西日 秋甫 ○わが喜寿の西日聊かギンギラギン 々 ○図書館へ逃げる手もある西日中 々

河童忌

○河童忌や芋の葉に玉の宝石 (かっぱきやいものはにたまのほうせき) ○河童忌や夫の肋(あばら)の薄さかな 秋甫 ○九冊の全集古ぶ餓鬼忌なり 々 ○河童忌や水番の星仰ぎけり 々

空蝉

○空蝉のしがみつきたるこの世かな (うつせみのしがみつきたるこのよかな) ○空蝉や虚空に砂を抱きけり 秋甫 ○空蝉の背にくっきりと正中線 々 ○空蝉の更地に仰向いてゐたり 々

大暑

○糸瓜のごと胡瓜もち来る大暑かな (へちまのごときゅうりもてくるたいしょかな) ○からだ張るゴウヤの棚や大西日 秋甫 ○狛犬の阿吽大暑を睨むかな 々 ○供花の水たちまち涸れる大暑かな 々

土用の丑

○新聞のちらしに何所も鰻の日 (しんぶんのちらしにどこもうなぎのひ) ○土用波入り来る波止に鱚あげる 秋甫 ○口開けて土用の丑の雀かな 々 ○土用の日うなぎのぼりの暑さかな 々

白南風

○白南風の沖に漁船の音軽ろき (しろはえのおきにぎょせんのおとかころき) ○白南風の百葉箱を潜り抜く 秋甫 ○白南風に乗って燕の試し飛び 々 ○白南風や宝島へといざ出航 々

○蜩や未来図を見て不可もなく (ひぐらしやみらずをみてふかもなく) ○かなかなに目覚めて想う父母のこと 秋甫 ○初蜩目覚めて胸の奥に鳴く 々 ○蜩やきりきりきりと海明ける 々

枝豆

○枝豆の丹波ものとて根ごと買ふ (えだまめのたんばものとて根ごとかう) ○枝豆の突き出しにビール追加して 秋甫 ○枝豆の殻大げさに皿の上 々 ○枝豆のみどり育てば丹波黒 々

跣足

○寄せ波に跣足の砂を洗わせる (よせなみにはだしのすなをあらわせる) ○跣足の漁夫儀式のように獲物負う 秋甫 ○老漁夫の跣足の先も海に灼く 々 ○鳴き砂の音を素足に聞いてゐる 々

苦潮

〇苦潮や針呑む子河豚きゅっと鳴く (にがしおやはりのむこふぐきゅっとなく) 〇赤潮のミジンコ角を生やすかな 秋甫 〇海の家組み立てすむや赤潮来る 々 〇苦潮やアメーバーは人の始祖 々 藤井聡太の新棋聖誕生。17歳11か月。

団扇

〇白扇の片手が煽る檄の文字 (はくせんのかたてがあおるげきのもじ) ○碁敵の扇子の文字の勝開けず 秋甫 ○山寺の庫裏の柱に渋団扇 々 ○縁先のよもやま話団扇風 々

蜘蛛

○足高軍曹便所の前の見張りかな (あしだかぐんそうべんしょのまえのみはりかな) ○出会いがしらの足高蜘蛛を許しけり 秋甫 ○ひやひやに足高蜘蛛と雨の夜 々 ○蜘蛛の子の今誕生にビッグバーン 々 アシダカ蜘蛛は家の中にいる衛生害虫のゴキブリなどを食べて…

甘酒

○冷か燗か甘酒に思案中 (ひやかかんかあまざけにしあんちゅう) ○一夜酒(ひとよざけ)眠り足りない子を泣かす 秋甫 ○片箸に回し味みる一夜酒 々 ○甘酒のアイスキャンデー宵の宮 々

○シャツの背の汗清々し漢かな (シャツのせのあせすがすがすしおとこな) ○修忌の僧耳の後ろの汗止まず 秋甫 ○昔語るに大方の汗の染み 々 ○あの時代(とき)の絵はキュウーポラと汗の顔 々

守宮

○雨戸閉め守宮の腹を握ってしまう (あまどしめやもりのはらをにぎってしまう) ○守宮鳴くかまことしやかに聞いてみる 秋甫 ○守宮来て一人の我を挑発す 々 ○守宮の戸開けずひと日をやり過ごす 々

大出水

○大出水去って稜線帰る雲 (おおでみずいってりょうせんかえるくも) ○大出水今日で三日も雨やまず 々 ○大出水冠水の中泳ぎ切る 々 ○大出水救命ボートにやぎ乗せる 々

百合

○鬼百合の開ききったるあばた貌 (おにゆりのひらききったるあばたがお) ○百合の名の姫から鬼へ多きかな 秋甫 ○笹百合の一本づつのもの思い 々 ○鉄砲百合ソロモンの都偲びぬ 々

夏燕

○夏燕二番子も飛び大家族 (なつつばめにばんごもとびだいかぞく) ○雨去って窓の蒼空(そら)截る夏燕 味甫 ○夏燕子に旅立ちの日の近し 々 ○夏燕南の海の話など 々

夕凪

○夕凪や船荷下ろしに勤しめり (ゆうなぎにふなにおろしにいそしめり) ○夕凪の港に蜑(あま)の焼く煙 秋甫 ○釣り人の竿畳をり夕凪る 々 ○夕凪や鈴も己を休めけり 々

水中花

○水中花合歓咲くやうに開きけり (すいちゅうかねぶさくようにひらきけり) ○水中花老醜もまた愛おしく 秋甫 ○散る花に憧れている水中花 々 ○水中花猫きて水を舐めたそう 々

焼酎

○北は麦南は芋の焼酎かな (きたはむぎみなみはいものしょうちゅうかな) ○血を引くや娘は梅焼酎を薬とて 秋甫 ○焼酎の麦を好みて二階堂 々 ○焼酎を男と呑んで漢ぶる 々

○ザギザギと骨切る男鱧の貌 (ザギザギとほねきるおとこはものかお) ○鱧の貌錦小路に口をあけ 秋甫 ○湯引き鱧身の潔白を証して 々 ○鱧切りや祭囃子の稽古かな 々

楸邨忌

○お訪ひし店誰も来ず楸邨忌 (おとのいしみせだれもこずしゅうそんき) ○星星のお多福豆や楸邨忌 秋甫 ○楸邨忌眦潤む天の闇 々 ○人逝けば忌となり残る楸邨忌 々

文月

○文月やパソコン壊れペンを持つ (ふみづきやパソコンこわれペンをもつ) ○文月(ふづき)とて返信を待つ心かな 秋甫 ○文月(ふみづき)や千日紅の背が伸びし 々 ○文月(ふみづき)や空には空の憂ひあり 々