2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

四月尽

○一枚の田に夕日入る四月尽 (いちまいのたにゆうひいるしがつじん) ○疫病の終息はなく四月尽 秋甫 ○校門の閉ざされしまま四月尽 々 ○四月尽孵化するいのち満ちてをり 々

春惜しむ

○惜春や流行り病のほしいまま (せきしゅんやはやりやまいのほしいまま) ○凪潮を窓より眺め春惜しむ 秋甫 ○惜春や軒の雀は歌いをり 々 ○春惜しむ水がめ運ぶ人といて 々

山吹

○山吹の山吹色に山の裾 (やまぶきのやまぶきいろにやまのすそ) ○濃山吹しきり隣家に心向き 秋甫 ○山吹に何やら怪し小代官 々 ○濃山吹彩を解せぬ無骨者 々

呼子鳥

○アマビエを呼んでいるのか呼子鳥 (アマビエをよんでいるのかよぶこどり) ○子を呼ぶか親呼ぶ声か呼子鳥 秋甫 ○海山を翔けてアマビエ呼子鳥 々 ○宵口に鳴く声哀し呼子鳥 々

朧月

○末の世の鬼慟哭す朧の夜 (すえのよのおにどうこくすおぼろのよ) ○親知らず抜歯の後の朧月 秋甫 ○朧夜や親の出口を子の入りぬ 々 ○朧夜の魑魅魍魎の蠢ける 々

春窮

○春窮や流行り病に戸を閉てる (しゅんきゅうやはやりやまいにとをたてる) ○春窮に鬼となり果つ童子かな 秋甫 ○春貧しむかし子を喰う鬼のゐて 々 ○春窮や心に鬼を棲まわせて 々

春愁

○春愁や街は男の外出日 (しゅんしゅうやまちはおとこのがいしゅつび) ○春愁う円空仏の木片かな 秋甫 ○春愁の水平線に襲われる 々 ○春愁や風に山姥現れる 々

○田水来て俄か燕の街となる (たみずきてにわかつばめのまちとなる) ○疫病の無き軒下に燕かな 秋甫 ○燕の会話かの国の流行り病も 々 ○この国も人の影なく新燕 々

四月

○ビルの街人を拒みて病む四月 (ビルのまちひとをこばみてやむしがつ) ○病む四月映像に人消えてゆく 秋甫 ○疫病の棺並べて四月行く 々 ○病む地球(ほし)に供花する四月独りかな 々

葱坊主

○葱坊主自転車けったり蹴られたり (ねぎぼうずじてんしゃけったりけられたり) ○プランターの小さな葱に葱坊主 秋甫 ○葱坊主ビッグバーンが起きている 々 ○葱坊主頭惚けてゐたりけり 々

猫の子

○穴っぽの子猫猜疑の目に光る (あなっぽのこねこさいぎのめにひかる) ○子猫はや突起の舌に舐めゐるや 秋甫 ○猫の子の揃いて父の名は知らず 々 ○門口に座る子猫の目線避け 々

阿国の忌

○イベントの自粛迫らる阿国の忌 (イベントのじしゅくせまらるおくにのき) ○阿国忌や歌舞音曲を独り占め 秋甫 ○阿国の忌ピユイピユイと空の楽 々 ○阿国忌や出雲の神の舞好み 々

春嵐

○春嵐卓摑まえてエクササイズ (はるあらしたくつかまえてエクササイズ) ○蛙らも空飛ぶほどの嵐かな 秋甫 ○春嵐鴉の家は大揺れで 々 ○砂噛んで弁当惜しむ花嵐 々

養花天

○朝計る体温正常養花天 (あさはかるたいおんせいじょうようかてん) ○疫病に緊急事態養花天 秋甫 ○堆肥場に大根の花養花天 々 ○養花天猫にも髭の上向いて 々

クロッカス

○クロッカス黄帽子で行く園児かな (クロッカスきぼうしでいくえんじかな) ○クロッカス狭庭の上の大気圏 秋甫 ○安寧の容して咲けるクロッカス 々 ○足元にクロッカスみな上向きて 々

磯遊び

○禁漁区へ綱跨ぎ入る潮干狩り (きんりょうくへつなまたぎいるしおひがり) ○銭形の砂の向こうの潮干狩り 秋甫 ○山の子の走るばかりや磯あそび 々 ○マテ貝の塩に跳び出る潮干狩り 々

囀り

○薄々と空明け染て囀れる (うすうすとそらあけそめてさえずれる) ○囀りに障子開ければ山の雪 秋甫 ○ウイルスに籠る吾らへ囀れり 々 ○囀りに目覚めて今日の確かなり 々

遍路

○風の音雨の音聞く遍路かな (かぜのおとあめのおときくへんろかな) ○襖越し遍路の寝息届く宿 秋甫 ○托鉢の僧に礼拝する遍路 々 ○鈴の音と大根(おおね)跳ね来る遍路かな 々

○石垣の菫移すや庭の鉢 (いしがきのすみれうつすやにわのはち) ○落第の決って今年咲く菫 秋甫 ○八重よりも一重がよかり菫花 々 ○青年を見あげるように菫咲く 々

蒲公英

○蒲公英や新米教師廊下走る (たんぽぽやしんまいきょうしろうかはしる) ○鼓草すでにドラムの音ばかり 秋甫 ○局長が出て蒲公英の切手売る 々 ○有事です蒲公英のポポ赤信号 々

花まつり

○稚児の鼻狐をかいて花まつり (ちごのはなきつねをかいてはなまつり) ○この年の流行り病や鎮花祭 秋甫 ○戸口よりそっと顔出す鎮花祭 々 ○狐らの跋扈(ばっこ)するやう花鎮 々

春の月

○春の月今宵スーパームーンとよ (はるのつきこよいスーパームーンとよ) ○春の月家族写真の真ん中に 秋甫 ○妖しくも一寝の後の春の月 々 ○春の月駱駝仰ぎて片恋ひ 々

目借時

○テレワーク返信を待つ目借時 (テレワークへんしんをまつめかりどき) ○噴水に放物線の目借時 秋甫 ○公園の鳩にパンやる目借時 々 ○目借時風の音にも慣れるとき 々

花曇り

○花曇り里を追われて山に入る (はなぐもりさとをおわれてやまにいる) ○真白き障子の外の花曇り 秋甫 ○予備校に弁当食ぶる花曇り 々 ○花曇りウイルスの禍の忍び寄る 々

子雀

○子雀が障子貼る手を見てをりぬ (こすずめがしょじはるてをみておりぬ) ○雀の子瞼の父は忠太郎 秋甫 ○手の中に早鐘うてる雀の子 々 ○まっ白の障子嬉しき雀の子 々

花冷え

○夜桜に衣変えたる花の冷え (よざくらにころもかえたるはなのひえ) ○背を向けて座るゴリラや花の冷え 秋甫 ○花冷えや百人町の鉄砲隊 々 ○花冷えてめくら障子の仄灯り 々

春障子

○春障子閉ててウイルス隔てけり (はるしょうじたててウイルスへだてけり) ○張替えて障子の外の風光る 秋甫 ○麗かや洗ひ障子を塀に立て 々 ○春雷に震え慄(おのの)く夜の障子 々

○蝶々の悲しみ高く高く浮く (ちょうちょうのかなしみたかくたかくうく) ○蝶々追う青年白い少女に会う 秋甫 ○二頭のどか三頭目きて蝶狂う 々 ○ふたつゐて三つになって蝶狂う 々

花の雨

○花の雨改札口にメール待つ (はなのあめかいさつぐちにメールまつ) ○花の雨手に確かめて駅出る人 秋甫 ○六甲のシスターも行く花の雨 々 ○象頭山に嫉妬の神や花の雨 々

四月馬鹿

○引っ越しの荷の窓出でし万愚節 (ひっこしのにのまどいでしばんぐせつ) ○人形の笑いまろびぬ四月馬鹿 秋甫 ○空と無の経ありがたき万愚節 々 ○四月馬鹿嘘考えて口ごもる 々