2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

春禽

○春禽の遊びごころに喜べり (しゅんきんのあそびごころによろこべり) ○春禽や稚児の眦(まなじり)紅引いて 秋甫 ○春禽に雨の一日を安ませる 々 ○軒よりは野に出て春の小鳥かな 々

春曙

○春曙乾坤一擲野に出でよ (はるあけぼのけんこんいってきやにいでよ) ○春暁や君を発たせる灯をつけし 秋甫 ○春曙いかなご漁の船二隻 々 ○春暁やほのぼの心晴れてゐし 々

春愁

○春愁や結果待つ日の悲喜こもごも (しゅんしゅうやけっかまつひのひきこもごも) ○春愁やなにかを買って晴れるなら 秋甫 ○春愁につかまり易き家系かな 々 ○春愁や珈琲を濃く淹れてみる 々

菜飯

○花菜入るおからのお菜いただきぬ (はなないるおからのおさいいただきぬ) ○春窮の昔嫁菜のめしの日々 秋甫 ○歯につけて大根の葉の菜飯食ぶ 々 ○菜飯煮て春菊分葱和えて食ぶ 々

水温む

○家々や夜半の雨も水温む (いえいえややはんのあめもみずぬるむ) ○海豹(あざらし)の水の温みを悲しめり 秋甫 ○水温むとて心緩めることならむ 々 ○水温む湯ざまし飲んで思ふこと 々

○鶯の今朝よく晴れて初音かな (うぐいすのけさよくはれてはつねかな) ○天神の梅鶯を胸に抱き 秋甫 ○嵐電の白梅町の初音かな 々 ○梅鶯絵にも描かるる春電車 々

三椏の花

○三椏の花の向こうに厨子の海 (みつまたのはなのむこうにずしのうみ) ○忘らるる三椏の花祖谷の里 秋甫 ○三椏の花も咲きをり紙の町 々 ○三椏の花涅槃会の回り寺 々

春一番

○春一番着地手こずる鷺の足 (はるいちばんちゃくちてこずるさぎのあし) ○犬入れて春一番に備えけり 秋甫 ○春一番モーゼの如く海に立つ 々 ○断捨離を春一番に促さる 々

料峭

○料峭や寺守の鐘撞き始む (りょうしょうやてらもりのかねつきはじむ) ○料峭や観潮船の舵たゆたう 秋甫 ○料峭の港の見える糶市場 々 ○料峭や疫病の街人絶えて 々

多喜二の忌

○軍手拾う運河の街に多喜二の忌 (ぐんてひろううんがのまちにたきじのき) ○若き日にスクラム組みし多喜二の忌 秋甫 ○多喜二の忌女工哀史読む青春 々 ○多喜二の忌二十六聖人と並べ 々

春潮

○春潮や黒潮の親に会う辺り (しゅんちょうやくろしおのおやにあうあたり) ○春潮やフェリーに新の自転車と 秋甫 ○春潮や豪華客船病む停泊 々 ○春の潮鳴門の渦に船も出て 々

如月

○如月の風つよき日に汝は生まる (きさらぎのかぜつよきひにながうまる) ○如月やシベリウス聞くベッド中 秋甫 ○如月の風テレビ塔鳴らし行く 々 ○如月や風邪の子の窓に頬杖 々

梅二月

○梅二月四十を過ぎた娘の誕生日 (うめ二がつしじゅうをすぎたこのたんじょうび) ○梅二月青葉城址の樹にも来よ 秋甫 ○梅二月白梅の蕊芯通す 々 ○梅二月一呼気に愛立たしめよ 々

獺の祭

○獺祭の独り気儘な身の辺り (だっさいのひとりきままにみのあたり) ○満月の潮の釣果を獺祭 秋甫 ○獺祭に出て来よ日本獺よ 々 ○ひとり居のものぐさ太郎獺祭 々

蕗の薹

○蕗の薹知らぬふりして手を繋ぎ (ふきのとうしらぬふりしててをつなぎ) ○この旬の天婦羅ならば蕗の薹 秋甫 ○蕗の薹苦きは疎開育ち故 々 ○蕗の薹摘む手に犬の鼻が来て 々

菠薐草

○根の赤く太きが旨し菠薐草 (ねのあかくふときがうましほうれんそう) ○オリーブが大変ポパイの菠薐草 秋甫 ○あのころの菠薐草はパーフェクト 々 ○アメリカのほうれん草は缶の中 々

匂ひ草

○匂ひ草八堂山に訪ね来て (におひくさはちどうやまにたずねきて) ○七折に小梅の花や梅まつり 秋甫 ○梅の香に誘われて来る目白かな 々 ○梅錦てふ酒蔵に梅の花 々

下萌

○下萌や日切り地蔵に願かけて (したもえやひきりぞぞうにがんかけて) ○陸奥に大願成就草萌ゆる 秋甫 ○お地蔵の笑顔に今朝の草青む 々 ○下萌て年々歳々同じからず 々

建国日

○あの時は紀元は二千六百年 (あのときはきげんはにせんろっぴゃくねん) ○建国日顎はる吾は縄文人 秋甫 ○八百万の神をいただき建国日 々 ○紀元節二千六百年八十年 々

早春

○風の想ひ早春の木々に囁く (かぜのおもいそうしゅんのきぎにささやく) ○静寂に早春の獣目覚めけり 秋甫 ○早春の淡き夢胸にとどめよ 々 ○早春や川のささやき野が聞けり 々

余寒

○開けて見た郵便受けの余寒かな (あけてみたゆうびんうけのよかんかな) ○受験子の蒲団の中の余寒かな 秋甫 ○寝座にゐて余寒明りの思案かな 々 ○猫が物落として走る余寒かな 々

春の猫

○春猫のこの場合ノラ猫がいい (はるねこのこのばあいノラねこがいい) ○春の猫それはまたそれ猫でもなし 秋甫 ○恋猫のもののみごとに窶れけり 々 ○憑きものが落ちれば仕舞猫の恋 々

春待つ

○することも無き春しきり待たれるや (することもなきはるしきりまたれるや) ○待春や黄色い財布買いにけり 秋甫 ○待春に親の気子の気移ろへり 々 ○万象の春待つ気配地に満ちる 々

海苔

○封切れば海苔芳しき朝餉かな (ふうきればのりかぐわしきあさげかな) ○荒磯の岩海苔採るや日本海 秋甫 ○岩海苔の乾けば海女の手のごとし 々 ○頬かぶりして岩海苔採りの礁に這う 々

金縷梅の花

○金縷梅の花きらきらと金髪娘 (まんさくのはなきらきらときんぱつむすめ) ○金髪に振り向けば金縷梅の花 秋甫 ○陸奥の万作咲くやポンポンと 々 ○無秩序に金縷梅の花咲きにけり 々

立春

○タミフルに熱も下がりて春立ぬ (タミフルにねつもさがりてはるたちぬ) ○立春の日の上空に寒気来る 秋甫 ○熱冷めて朝の窓より春立ぬ 々 ○立春の光背にして老ふたり 々

節分

○大津絵の鬼も加勢に節分会 (おおつえのおにもかせいにせつぶんえ) ○節分の鬼のパンツの小さきけり 秋甫 ○節分の夕餉に煮るや年の豆 々 ○節分の豆鉄砲に鳩の来て 々

○柊挿し猫に鰯をねだられる (ひいらぎさしねこにいわしをねだられる) ○昼餉の潤目柊に挿しにけり 秋甫 ○柊挿す母の実家は忍者の里 々 ○柊挿す入口に鍵かけてある 々

雪割草

○雪割草けふ松山のお椿さん (ゆきわりそうきょうまつやまのおつばきさん) ○雪割草その名を恋ふる雪の上 秋甫 ○子も孫も冬の生まれに雪割草 々 ○暖冬の野にやすやすと雪割草 々