2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

冬草

○冬草や地を這う上へ陽のひかり (ふゆくさやちをはううえへひのひかり) ○冬草や驚くほどに根の長し 秋甫 ○長き根を真っすぐ伸ばす冬の草 々 ○長らえて地を這うもよし冬の草 々

寒造

○寒造伏水の深井汲み上げて (かんづくりふしみのふかいくみあげて) ○試飲とて大吟醸の寒造 秋甫 ○酒米の研ぎ清まされし寒造 々 ○寒造杜氏の胸のさくら色 々

寒灯

○受験子の窓寒灯の佳境かな (じゅけんしのまどかんとうのかきょうかな) ○寒灯消し深夜ラジオに聞き変える 秋甫 ○飛行機の灯の流れ行く冬の窓 々 ○寒灯の疎らに湾の闇迫る 々

寒の水

○寒の水わが身の内の一志かな (かんのみずわがみのうちのいっしかな) ○陸奥に一穢とてなき寒の水 秋甫 ○猜疑なき心もて呑む寒の水 々 ○石鎚の伏流水現れ寒の水 々

寒菫

○寒菫やっぱりしゃがまないで行こう (かんすみれやっぱりしゃがまないでいこう) ○物陰を好まぬまでも冬菫 秋甫 ○冬菫その身のほどの高さかな 々 ○冬菫明日も同じ空の下 々

寒雀

○寒雀嫗も交りフラダンス (かんすずめおうなもまじりフラランス) ○雨の日は一羽も来ずに寒雀 秋甫 ○寒雀囮の籠に米撒かれ 々 ○寒雀神田の書肆に古地図見る 々

初天神

○牛撫でて胸の願書や初天神 (うしなでてむねのがんしょやはつてんじん) ○初天神去年の鷽も捨てがたし 秋甫 ○鷽替へて空の巣になる寂しみも 々 ○陸奥へ行く絵馬なども初天神 々

寒卵

○寒卵受精の有無は問われざり (かんたまごじゅせいのうむはとわれざり) ○昨日から雨降って寒卵割る 秋甫 ○寒卵孫にも在りぬ賞味期限 々 ○寒卵産めよと鶏舎夜もなし 々

冬の虹

○母の文字記憶になくて冬の虹 (ははのもじきおくになくてふゆのにじ) ○兄が母の手を引き渡る冬の虹 秋甫 ○軒先に魚捌きをり冬の虹 々 ○時雨虹昏き海より立ち上がる 々

悴む

○悴む子目が母に似て我に似ず (かじかむこめがははににてわれににず) ○悴むや老いてよすがに転がりぬ 秋甫 ○叱られて目つむる猫の悴めり 々 ○首手足引っ込めて亀悴める 々

冬萌

○冬萌や殉教に果つ海青し (ふゆもえやじゅんきょうにはつうみあおし) ○冬萌や世界遺産の軍艦島 秋甫 ○冬木の芽能登の翌檜財布に入れ 々 ○冬の芽に孫のあしたを信じけり 々

大寒

○大寒や自己採点の試験終へ (だいかんやじこさいてんのしけんおえ) ○大寒の鵯甲高き瞋りかな 秋甫 ○大寒や珈琲断ちを解きにけり 々 ○大寒やお大師さんは寒いはず 々

冬菜

○鍋あれば水菜壬生菜に京の冬 (なべあればみずなみぶなにきょうのふゆ) ○七輪の鍋に水菜と鯨なべ 秋甫 ○冬菜干すや比叡颪に背を向けて 々 ○夕時雨汁に一菜を摘みに出る 々

寒紅

○寒紅を引きし稲荷の狐かな (かんべにをひきしいなりのきつねかな) ○マトリョーシカに寒紅入れて旅了る 秋甫 ○寒紅や赤い実を挿す上り口 々 ○寒紅など縁とおき衆生なりき 々

○箸に割って舌にとろりと蕪蒸 (はしにわってしたにとろりとかぶらむし) ○白肌を麹の花に蕪漬け 秋甫 ○蕪蒸食べ罪人の心生るる 々 ○真っ赤なるロシアのシチュー緋の蕪 々

冬日和

○魞あげる舟にかもめの冬日和 (えりあげるふねにかもめのふゆびより) ○冬麗島指して行くポンポン船 秋甫 ○猫島へ魞舟帰る冬日和 々 ○高島の魞に寒鮒跳ね上がる 々

寒禽

○寒禽や回峰行の僧走る (かんりんやかいほうぎょうのそうはしる) ○墨染を雪に隠して鴉立つ 秋甫 ○爪を噛む冬の鴉の眸が光る 々 ○寒禽や小さきものの愉める 々

懐手

○一人居のただ何となく懐手 (ひとりいのただなんとなくふところで) ○風狂の友懐手して逝きぬ 秋甫 ○寅さんのはにかみ隠す懐手 々 ○世を拗ねる拳かくしぬ懐手 々

寒復習

○寒復習シャーペンの芯プッシュする (かんざらいシャーペンのしんプッシュする) ○盤上にひとり碁石(いし)おく寒復習 秋甫 ○迫り来る受験に向かう寒復習 々 ○吟行の常の道なる寒復習 々

寒の月

○寝る家の上に泊まりし寒の月 (ねるいえのうえにとまりしかんのつき) ○子に遠き外の厠に寒の月 秋甫 ○お隣の機(はた)の音聞く寒の月 々 ○一人寝て寒満月に看取らるる 々

寒暁

○寒暁の刻の確かに今日生るる (かんぎょうのときのたしかにきょううるる) ○寒暁や拘泥に身を沈めけり 秋甫 ○ごみ出しを待てる鴉や寒曙 々 ○寒暁の湯舟に入るる朝湯かな 々

寒雷

○寒雷や夢の手を固く握りし (かんらいやゆめのてをかたくにぎりし) ○寒雷やあの一喝を忘れまじ 秋甫 ○寒雷の如く在りたれ父ならむ 々 ○冬の雷忘れてゐたり夫のこと 々

寒四郎

○寒四郎ひねもす海を揺さぶりぬ (かんしろうひねもすうみをゆさぶりぬ) ○初竿や寒四の濤の容赦なく 秋甫 ○寒四郎貼り紙にある尋ね人 々 ○登校の児を押して行く寒四郎 々

木偶廻し

○憶え来て庭に懐かし木偶廻し (おぼえきてにわになつかしでくまわし) ○傾城を震え泣かせる傀儡師 秋甫 ○傀儡の元結切れて目を瞑る 々 ○松取れて鳴門座の木偶もどり来る 々

七種粥(爪、人日)

○七種爪剪ってすっきり受験の子 (ななくさづめきってすっきりじゅけんのこ) ○馬の日の次人日の雨になる 秋甫 ○七草の薺はこべら入れぬ粥 々 ○人日やすずなすずしろ小豆粥 々

寒の入

○ウイリアム・テル序曲鳴る寒の入 (ウイリアム・テルじょきょくなるかんのいり) ○工場の排水澱む寒の入 秋甫 ○朝焼けの空へ寒入りにけり 々 ○寒入りてひとつ思案の増しごと 々

初読

○初読は金の卵を生む鵞鳥 (はつよみはきんのたまごをうむがちょう) ○ひとり居の気儘に始む初読書 秋甫 ○初読の狐よくでる寓話かな 々 ○初読や喜寿が読むイソップ寓話 々

四日

○ストーブに芋が乗りたる四日かな (ストーブにいもがのりたるよっかかな) ○釣人の岸壁に立つ四日かな 秋甫 ○全車出てゴミ収集の初荷かな 々 ○三日まで許して四日戒める 々

喰い積(お節)

○喰い積の地味物ばかり残されし (くいつみのじみものばかりのこされし) ○喰い積の黒豆掴む利休箸 秋甫 ○お節取る分け皿の鶴かくす 々 ○重箱の隅の黒豆光りけり 々

初夢

○初夢や亀のとなりに寝てをりぬ (はつゆめやかめのとなりにねておりぬ) ○初夢に出てきた人の何かある 秋甫 ○はっきりと見た初夢の色香なし 々 ○初夢の電車はわれを置いて行く 々