2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

八月尽

○電子脳「京」を「富岳」へ八月尽 (でんしのうきょうをふがくへはちがつじん) ○子別れの鴉の朝に八月尽 秋甫 ○八月尽宿題の子の夜の悪夢 々 ○新聞を一括りする八月尽 々

苔桃

○苔桃の森の奥にはトロルの村 (こけもものもりのおくにはトロルのむら) ○苔桃や熱唱のフィンランディア 秋甫 ○トロル来て苔桃の篭持って行く 々 ○苔桃を栗鼠が隠して赤い実に 々

鉦叩

○今年また門を叩くや鉦叩 (ことしまたかどをたたくやかねたたき) ○鉦叩今宵はお布施出ぬそうな 秋甫 ○鉦叩魑魅魍魎を地の底へ 々 ○潮騒や破れ苫屋の鉦叩 々

秋の潮

○舟留めの苔食うチヌや秋の潮 (ふなどめのこけくうチヌやあきのしお) ○イヤホンに別れの曲や秋の潮 秋甫 ○水底は怨霊ねむる秋の潮 々 ○秋潮へ最終便の汽笛鳴る 々

秋雨

○アンテナに鴉の憂う秋の雨 (アンテナにからすうれいるあきのあめ) ○秋雨や縁の下より忍び音の 秋甫 ○秋雨やじゃが芋の芽が闇に出る 々 ○秋雨に今さら蝶の急ぎ飛ぶ 々

鉄道草

○鉄道草線路は母のいる町へ (てつどうぐさせんろはははのいるまちへ) ○鉄道の文明開化明治草 秋甫 ○D51やヒメムカシヨモギ顔を搏つ 々 ○鉄道草匂う線路脇の家 々

新涼

○新涼やきざみ茗荷の香をのせて (しんりょうやきざみみょうがのかをのせて) ○京の娘に新涼を聞く長電話 秋甫 ○新涼や稿の初めの箇条書き 々 ○絵てがみに新涼の彩うす緑 々

蕎麦の花

○蕎麦の花粉ひき唄など祖谷の里 (そばのはなこひきうたなどいやのさと) ○蕎麦咲けば死んだ娘が行くかずら橋 秋甫 ○かずら橋渡れば秘境蕎麦の花 々 ○奥祖谷の案山子の里や蕎麦の花 々

蟋蟀

○雨の音蟋蟀の音と替わり合う (あめのおとこおろぎのねとかわりあう) ○脱衣場に固まってゐるいとどかな 秋甫 ○竈馬五右衛門風呂の蓋の上 々 ○二十燭光燈りいとどと貰い風呂 々

蓑虫

○蓑虫や樽の哲人ディオゲネス (みのむしやたるのてつじんデォィオゲネス) ○蓑虫のひとりぽっちの家背負い 秋甫 ○茶立虫お茶など立てる主でなし 々 ○わが書架を安住の地に茶立虫 々

夜の秋

○「哀愁」のヴィヴィアン・リーと夜の秋 (あいしゅうのヴィヴィアン・リーとよるのあき) ○夜の秋のポリアセタール組成式 秋甫 ○湯上りにネオンの坂や夜の秋 々 ○牛乳を飲みほしていざ夜学の徒 々

花臭木

○生い立ちに翻弄されて花臭木 (おいたちにほんろうされてはなくさき) ○下りて来る臭木の風の中にゐる 秋甫 ○海に出る小径を隠す花臭木 々 ○花臭木掘っ立て小屋の庭広き 々

蜻蛉

○雨あがり蜻蛉のショーの始まりぬ (あめあがりとんぼのしょーのはじまりぬ) ○雨の日は蜻蛉のショーの休演日 秋甫 ○赤とんぼ歩き遍路の笠の上 々 ○赤とんぼロープウエーに山下りる 々

踊り

○笛太鼓神を誘う踊りの輪 (ふえたいこかみをいざなうおどりのわ) ○白足袋とひょとこ面の踊り入る 秋甫 ○うっかりと神も顔だす踊りかな 々 ○踊りの輪炭坑節の二重三重 々

鬼薊

○船着いてすぐ山の道鬼薊 (ふねついてすぐやまのみちおにあざみ) ○島の焼き場の朽ち果てて鬼薊 秋甫 ○鬼薊島の山より山羊の声 々 ○鬼薊海賊の墓百基あり 々

今朝の秋

○今朝の秋迷子の風と朝餉食ぶ (けさのあきまいごのかぜとあさげたぶ) ○颱風にどんびり子ゐて今朝の秋 秋甫 ○今朝秋や台風の子を入れてやる 々 ○空掃いて野分のあとの秋の顔 々

終戦日

○南方の黒雲疾駆終戦日 (なんぽうのくろくもしっくしゅうせんび) ○終戦日颱風情報聞いてをり 秋甫 ○転倒の台風ニュース終戦日 々 ○語り部の語りつがるる終戦日 々

棚経

○棚経の僧墨染めを翻す (たなぎょうのそうすみぞめをひるがえす) ○棚経を了へて野分の中の僧 秋甫 ○棚経の茄子や胡瓜に箸の脚 々 ○棚経の雨に半紙の文字にじむ 々

螽斯

○螽斯ラ・カムパネルラ聞く夕べ (きりぎりすラ・カムパネルラきくゆうべ) ○螽斯明日の大風知って鳴く 秋甫 ○螽斯復員の父大酒呑む 々 ○着倒れの着物きて逝く螽斯 々

炎天

○炎天や父子の竿の餌がバテし (えんてんやおやこのさおのえがばてし) ○水底の魚は夏の子弄ぶ 秋甫 ○夏の子や潮を選べぬ波止の釣り 々 ○鱚の子のうっかり釣られ炎天に 々

蝉しぐれ

○南山に右肩の凝る蝉しぐれ (なんざんにみぎかたのこるせみしぐれ) ○外よりも家の中なる蝉しぐれ 秋甫 ○歓声に一瞬消えし蝉しぐれ 々 ○蝉しぐれカレー煮込んでゐるところ 々

空蝉

○空蝉に俤のこる眼かな (うつせみにおもかげのこるまなこかな) ○空蝉の今朝を選びし空の透く 秋甫 ○蝉蛻(せんぜい)の飛び立った空見つめをり 々 ○蝉蛻や確かにこの世を見た証 々

西瓜

○二番手の西瓜に親の愛薄く (にばんてのすいかにおやのあいうすく) ○大西瓜水分補給ということに 秋甫 ○切るまでは縞目形もよき西瓜 々 ○大西瓜叩いてみても一人かな 々

秋来ぬ

○秋来ぬと網戸より蚊を逃しやる (あきこぬとあみどよりかをのがしやる ○立秋の山白き風吹きやらむ 秋甫 ○今朝の秋一匹の蠅始末せむ 々 ○クール便隣へ届く今朝の秋 々

はったい粉

○物言へば煙になりぬはったい粉 (ものいえばけむりになりぬはったいこ) ○昔日の淡き味する水のまま(飯) 秋甫 ○水飯の無味乾燥に麦こがし 々 ○洗い飯胡麻塩ふって掻き込みぬ 々

原爆忌

○ピカドンの白光の絵や原爆忌 (ピカドンのはっこうのえやげんばくき) ○広島忌ミサイル二発飛ばされる 秋甫 ○原爆忌颱風八号上陸す 々 ○広島忌大風が消す平和の灯 々

溽暑

○濡れ手ぬぐい肩に掛けたる溽暑かな (ぬれてぬぐいかたにかけたるじょくしょかな) ○犬小屋の襤褸なげだされ猛暑中 秋甫 ○暑中見舞いの文字極か酷か猛か 々 ○猛暑と書き特別のと書き添える 々

海月

○月光へ海月の送る暗号電 (げっこうへくらげのおくるあんごうでん) ○仰ぎ見る海月に遠き天の星 秋甫 ○ぼろぼろに引きちぎられて海月死す 々 ○電気水母一触の感電死 々

夏座敷

○開けて待つ祭入り来る夏座敷 (あけてまつまつりいりくるなつざしき) ○一人来て一人帰りし夏座敷 秋甫 ○夏座敷どぜうは土間の桶の中 々 ○夏座敷氷の上の洗いかな 々

風鈴  

○風鈴の糸の縺れや風もよう (ふうりんのいとのもつれやかぜもよう) ○風鈴の舌を切られて無言かな 秋甫 ○風鈴の名のすず虫と書かれをり 々 ○風鈴の音も夕凪に盗まれし 々