2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

○桜どき婆には婆の狂いどき (さくらどきばばにはばばのくるいどき) ○花の雨ゆっくり雫ふくらみて 秋甫 ○花どきの人の心のざわめけり 々 ○花の風吹かばきれいに攫ってほしい 々 娘の姑がこの春今までのガラ系を卒業して、スマホを購入したのである。初代か…

雁供養

○雁供養拾い集めし形見の木 (がんくようひろいあつめしかたみのき) ○雁風呂を焚く北の昔話かな 秋甫 ○雁供養帰らぬものの木っ端かな 々 ○雁風呂や東北訛りしんみりと 々 雁風呂 雁は秋に渡って来る時、海上で羽を休めるためめいめい木片を銜えているのだが…

薶晦

○占えば孤独死と出て薶晦 (うらなえばこどくしとでてよなぐもり) ○霾晦鶏舎の中の点灯管 秋甫 ○蒙古風血の昂りを抑えつつ 々 ○霾天(ばいてん)の鳥は無言に飛んでゆく 々 何年か前面白半分でインタネットの性格診断なるものを試みてみたことがあった。次…

○桜咲く奈良の都に鹿と住む (さくらさくならのみやこにしかとすむ) ○朝ざくら四人部屋なる女子大寮 秋甫 ○朝ざくら鹿の貌ぬっと窓にゐて 々 ○夜桜や寮に机とベッドのみ 々 「おひとりさまの老後」もうすでに後期高齢者の域に達している立場から読むと、作…

遠霞

○遠霞投網に掛かる瀬戸の海 (とおがすみとあみにかかるせとのうみ) ○停泊の灯り踊らす遠霞 秋甫 ○遠霞船の灯の宴たけなわに 々 ○海と山挟んで攻むる遠霞 々 血圧降下剤のせいかどうか、呑み始めたら便が出なくなった。座っても横になっても苦しく七転八倒…

鳥帰る

○鳥帰るあのヒマラヤを越えるもの (とりかえるあのヒマラヤを越えるもの) ○アラブの春とは言い難き鳥帰る 秋甫 ○木っ端とてなく身ひとつに鳥帰る 々 ○鳥帰る一蓮托生羽餃子 々 高血圧症の仲間入り。バルサルタン錠40mgを1日一錠の服用となってしまった。…

朧月

○朧月泪にぬれし麒麟の目 (おぼろづきなみだにぬれしきりんめ) ○狼の遥かな荒野朧月 秋甫 ○サバンナに鬣の影朧月 々 ○朧月沼の夢みる河馬の檻 々 高村光太郎の「ぼろぼろな駝鳥」という詩が頭の中にあって、今日の四句となった。 「ぼろぼろな駝鳥」 何が…

柳鮠

○柳鮠ひかり放ちて遡る (やなぎはやひかりはなちてさかのぼる) ○柳鮠美観地区なる橋の上 秋甫 ○汽車のすす濯げば寄り来柳鮠 々 ○石仏の影いただきて柳鮠 々 柳鮠では思い出す光景がいくつかあった。 子供の頃、小川はいたる所に流れていて、それほど段差の…

土筆摘む

○貧しさも楽しき野辺の土筆摘み (まずしさもたのしきのべのつくしつみ) ○山ほどの土筆ひろげて袴取り 秋穂 ○雲水の列につくしの頭かな 々 ○意気合って土筆を摘めば二倍強 々 他にも土筆を摘む人がいた。パートナーの孫が東大に合格したのでお祝いを持って…

春嵐

○友人と戸口から来る春嵐 (ゆうじんととぐちからきるはるあらし) ○春疾風娘の袴裏返す 秋甫 ○取り上げて攫う気もなし春嵐 々 ○戸があけられて春嵐家の中 々 閉じこもり癖に支配されている。会話がうまく成立しないのだ。

治聾酒

○治聾酒や年々耳も遠くなり (じろうしゅやねんねんみみもとおくなり) ○治聾酒を一口飲んで墓に掛け 秋甫 ○治聾酒という酒の名も彼岸中 々 ○治聾酒に下戸の故人を付き合わす 々 春の社日(つちえの日)に呑むお酒を治聾酒といって、このお酒を飲むと耳の聞…

あたたかや

○あたたかや戸の開け閉てもおおらかに (あたたかやとのあけたてもおおらかに) ○あたたかや大樹の瘤の下の虚 秋甫 ○あたたかや漁する船に朝茜 々 ○あたたかや野に露の菜を摘みにけり 々 露の中に入って、恵の久保池の下の空き地で大量のつくしを摘む、今年…

彼岸入り

○彼岸入り雨降る鬱の重さかな (ひがんいりあめふるうつのおもさかな) ○彼岸雨腹の底まで冷えにけり 秋甫 ○扉開いて胎の内なる彼岸釈迦 々 ○永代に位牌在るらし彼岸寺 々 昨夜からの雨が朝も冷たく降りつづいている。

頬白

○頬白の口上聞くや昼近し (ほほじろのこうじょうきくやひるちかし) ○賑やかに頬白目白城の山 秋甫 ○頬白や団十郎を気取りけり 々 ○頬白の懲悪を訴えてをり 々 頬白をインターネットで検索してみると、雀より少し大きめで、頬が白いとある。 庭に枇杷の木が…

薺の花

○わが庭に入りて薺の花が咲く (わがにわにいりてなずなのはながさく) ○山道のぺんぺん草が轢かれをり 秋甫 ○子沢山むかし懐かし三味線草 々 ○薺にも薺のいのち薺咲く 々 「薺」という漢字 薺は毎年のように季語としても使わせてもらっているし親しんでいる…

春あけぼの

○春あけぼの製紙の煙茜さす (はるあけぼのせいしのけむりあかねさす) ○春暁や軒の雫の輝きぬ 秋甫 ○春は曙むべ鳥の囀るも 々 ○春暁へ茜の鳩の飛び立てり 々 近所の友人が腰を痛めたことから、絵手紙をやりとりしているのだが、もっぱら趣味の俳句と絵が葉…

春の雷

○北斎の富士を裂きたる春の雷 (ほくさいのふじをさきたるはるのらい) ○春の雷珈琲館にヴィヴァルディ 秋甫 ○春雷や雨を斜めに叩きけり 々 ○春雷の切り裂かんとて夜の窓 々 夜明けが少し早くなっている。起き出すとまずパソコンの前に座り今日の一句を考え…

磯開き

○磯開き鮟鱇汁に舌鼓 (いそびらきあんこうじるにしたつづみ) ○磯開き小道具腰に勇み足 秋甫 ○磯開き浜の火番を主にして 々 ○磯開き空籠に金集め来る 々

○投函の往復聞く初音かな (とうかんのいきかえりきくはつねかな) ○鶯の木の幼鳴きに呼ばれけり 秋甫 ○鶯に呼び止められる峠村 々 ○鶯や窯開けの日の人盛り 々 鶯が音楽で表現される歴史は古いという。バッハ以前にもチェンバロやヴァイオリンで鳴き声が現…

佐保姫

○佐保姫の海わたり来て漁師村 (さほひめのうみわたりくてりょうしむら) ○佐保姫はアネモネ色の絵具溶く 秋甫 ○佐保姫の青信号を渡っているよ 々 ○新聞と佐保姫の文届きけり 々 佐保姫、春を連れてやって来ると言われている。春を待ち望む季語として使われ…

三月十一日

○三月十一日夕焼け染まる (三がつ十一にちゆうやけそまる) ○合掌の背中叩きぬ青嵐 秋甫 ○春の波のたりのたりの震災忌 々 ○踝の静かに揃ふ釈迦涅槃 々 東北大震災から8年目の3月11日となった。

卒業子

○夢大志語らず胸に卒業子 (ゆめたいしかたらずむねにそつぎょうし) ○豊岡の連なる里に卒業す 秋甫 ○不登校の児の名も呼ばれ卒業す 々 ○引き籠りたき世へ放つ卒業子 々 ゆづの「栄光の架け橋」贈ります 誰にも見せない泪があった ....... 人知れず流した泪…

目刺

○解き難き結束バンド目刺焼く (ときがたきけっそくバンドめざしやく) ○人来るを忘れて目刺焼いてをり 秋甫 ○目刺焼いて午後の読書は捕りもの帖 々 ○望郷の海を見つめる目刺焼く 々

啓蟄

○啓蟄や心中の虫頭出す (けいちつやしんちゅうのむしあたまだす) ○啓蟄の日の日和見に徹しけり 秋甫 ○啓蟄を促す土に猜疑心 々 ○啓蟄やおちば帰りの船の行く 々

春泥

○丸善の洋書の前の春の泥 (まるぜんのようしょのまえのはるのどろ) ○跳び越えたはずの春泥へ尻もち 秋甫 ○春泥やペテルブルグのウインドウ 々 ○春の泥顔まで撥ねて子の帰る 々 梶井基次郎は丸善の洋書の棚に檸檬を置いたが、この句では春泥に汚れた長靴で…

畦焼

○畦焼の煙を出でて一輌車 (あぜやきのけむりをいでていちりょうしゃ) ○てんでんに広がり伸びる畦火かな 秋甫 ○畦の火やどこか遠くへ行~きた~い 々 ○畦を焼く祖父から叔父へ狼煙の火 々

春耕

○春耕の根石大きく回りけり (しゅんこうのねいしおおきくまわりけり) ○春耕の石拾いより農始む 秋甫 ○春耕や幾何を学びし昔かな 々 ○耕して光の中の農夫かな 々

目貼剥ぐ

○少しだけ生き方変えて目貼剥ぐ (すこしだけいきかたかえてめばりはぐ) ○蔀戸の北窓開くや牛寄り来 秋甫 ○目貼剥ぐ海の向こうに広島の 々 ○北窓開く人の噂も七十五日 々

紙雛

○潤びりし雨の節句の紙雛 (ほとびりしあめのせっくのかみひいな) ○温もって雛ぼんぼりの回りだす 秋甫 ○雛の酒とろりと酔おて左大臣 々 ○夫婦雛美しく老いること難し 々 今日、雨のひな祭りの日。

春愁

○頬杖の腕春愁に重かりき (ほほづえのうでしゅんしゅうにおもかりき) ○春愁や深夜ラジオのつなぐ朝 秋甫 ○春愁や平成三十年に閉ず 々 ○野に出でて春愁を払いけり 々