2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧
○日盛りやイエスは小さき者の列 (ひさかりやイエスはちさきもののれつ) ケーテ・コルヴッツの版画 イエスは施しを受ける小さき人の群れの中に居られた。 本田哲郎神父はこの事に腑を突き動かされ、釜ヶ崎の日雇い労働者たちの暮らしに寄り添っておられるの…
◦土鳩らは喉ふるわせて炎天下 (どばとらはのどふるわせてえんてんか) 連日の炎天下 フェンスに来た鳩は、沖の方を見やりながら絶えず喉を震わせていた。体内の熱を放出しているのだろうか。この瞬間、生きとし生けるものはみな暑さをやり過ごし命をつなぐ…
◦蟹の端居に沖よりの風の中 (かにのはしいにおきよりのかぜのなか) 炎天 辺りが明るくなるのを待って、早朝より表の木を切った。涼しいうちの作業が一番であったが、ゴミの収集車が来るまでにまとめて出して置きたい気持ちも強かったのである。 朝食前には…
◦蘭鋳やリウマチ熱の治療中 (らんちゅうやリウマチねつのちりょうちゅう) 金魚の夢 ある整形外科の受付ホールの隅に水槽があって、そこに年がら蘭鋳が入れられている。蘭鋳たちは殆ど自分の動きを見せずに水流に身をゆだねている風で、生きているのを証明…
◦たてつづけ音して終わる遠花火 (たてつづけおとしておわるとおはなび) 港花火大会 一昨日は港の花火大会があった。ここ数年雨で延期になったり、昼まで降っていた雨が止んでも厚い雲の下でぼんやり滲んだ花火が上がっていたりと、まともな花火日和ではな…
◦庭にきて夏痩せもなき雀かな (にわにきてなつやせもなきすずめかな) 怠け者の天国 ピーテル・ブリューゲル (1525〜1569) この絵の解説はこうである。「何もせずとも美食にありつける飽食の世界の住人は全て怠け者である」。 雀に八つ当たりをし…
◦空蝉の今生に目の大きさよ (うつせみのこんじょうにめのおおきさよ) 朝は蜩 空が明るみ始める頃鳴き出すのは蜩である。同じ蝉でもこの蜩は秋の季語になるのだ、そう言えば少しひんやりした空気の中で鳴いているような気がする。 蝉の幼虫は土の中に7、8…
◦水中花紙人形を着せ替える (すいちゅうかかみにんぎょうをきせかえる) 四国地方梅雨明け 川又直樹「火花」の芥川賞が話題になっている。「文学界」に発表された作品だったらしい。「文学界」という雑誌がまだ存在していたことに新鮮な気持ちになった。田…
◦水中の海老の悪夢に水あたり (すいちゅうのえびのあくむにみずあたり) 水中り 軽い食中毒か、水中りになったのだろうか、一晩中眠れなかった。それこそ体をエビのように曲げていなければならなかったのである。 池田澄子の句に ◦わが敵はわれ正坐して水中…
◦夏の夜や万太郎・修司ごったに読む (なつのよやまんたろう・しゅうじごったによむ) [水中花と冬の旅 久保田万太郎 ◦水中花咲かせしまひし淋しさよ (45歳) 寺山修司 ◦鵞鳥の列は川沿ひがちに冬の旅 (10代)
◦虹の橋わが家の二階から海へ (にじのはしわがやのにかいからうみへ) 驟雨 驟雨は夕立に分類されるらしい。けれどもこの2、3日の現象は夕立というより霧雨のようだ。部屋の中に掛けている大物の洗濯物を出したくて、太陽が顔を出している時、外に出てみる…
◦海の日の葭簀に雨の旗垂るる (うみのひのよしずにあめのはたたるる) 梅雨明けならず 中国地方、関東、甲信越は梅雨明けになって、南九州を除く一部と四国は取残されてしまった。 太陽の出ている空から雨が降ったり止んだりの驟雨が終日つづいていたから、…
◦蝉鳴いて大道具小道具備ふ (せみないておおどうぐこどうぐそろう) 一句の舞台 昨日から子供たちは夏休みに入った。家の中は一度に数種の蝉が鳴き出したような、てんやわんやになっている所もあるだろう。 ところが、今年、当の蝉は夏休みに入ってもこれま…
◦大夕焼け「晩鐘」の絵の中に居り (おおゆうやけばんしょうのえのなかにおり) 台風一過 台風11号が中国地方を縦断している頃、大町は大夕焼けに染まった。 台所の窓へ赤紫色の光が流れ来た時、次の瞬間家の外へ走り出ていた。颱風の後という状況で、その…
◦テロップの颱風情報無音に流る (テロップのたいふうじょうほうむおんにながる) 台風11号 昨夜11時頃、台風11号は高知県の室戸岬付近に上陸。 人は思考とか傾向といったものに関係なく、ただ興味を持つことがある。例えばテレビの隅に流れるテロップ…
◦宵山の鉾引きし日も雨の京 (よいやまのほこひきしひもあめのきょう) 祇園祭宵山 私にとって京都が町という形で意識され始めたのは小学校入学ため滋賀県の祖父母の家から当時両親が住んでいた太秦に連れ戻された頃からである。それまでの気の遠くなるよう…
◦大胡瓜黙って縁に置かれけり (おおきゅうりだまってえんにおかれけり) 胡瓜の夢 胡瓜の収穫がたけなわである。普段それほど会話がない家からも胡瓜が届き、その上、留守の間に何処から届いた物か知れない胡瓜まで、どれもこれも良く育ってヘチマと見まが…
◦桑の実や専門学校裏手門 (くわのみやせんもんがっこううらてもん)
◦地の底へ電子音鳴る蟇の恋 (ちのそこへでんしおんなるがまのこい)
◦雲水の作務衣に垂るる蚊遣香 (うんすいのさむえにたるるかやりこう)
◦凌霄花窓に来て暮らし覗きぬ (のうぜんかまどにきてくらしのぞきぬ)
◦終活のあれやこれやに合歓の花 (しゅうかつのあれやこれやにねむのはな)
◦北半球雲長ければ雨季長し (きたはんきゅうくもながければうきながし)
◦蝸牛きのふと同じ雲の下 (かたつむりきのうとおなじくものした)
◦ひまわりや7、8号の星祭り (ひまわりや7、8ごうのほしまつり)
◦湯引き鱧舞子の細き首白し (ゆびきはもまいこのほそきくびしろし)
◦煮山椒一言添えて友見舞う (にざんしょひとことそえてともみまう)
◦半夏雨降って柴もち届きけり (はんげあめふってしばもちとどきけり)
◦泡盛など吞める女のまた哀し (あわもりなどのめるおんなのまたかなし)
◦「なでしこ」のピッチに光る日焼け止め (「なでしこ)のピッチにひかるひやけどめ)